加藤のメモ的日記
DiaryINDEXpastwill


2009年05月15日(金) 生命が陸に上がったのは

地球上で現在知られている最も古い生物の化石は、35億年前のものです。これが化石だとわかったのは、ちょうど細胞分裂を起こしている途中のものだったからで、「これは生物だ」と見当がついたのです、この化石は球形の細菌のものでした。このころの地球はまだ酸素がなかったので、生物は酸素呼吸をしていませんでした。今から30億年前になると、今日のラン藻の仲間が海の中に現れます。

ラン藻は光合成をしますから、海の中はだんだん酸素がたまるようになります。しかし、海にたまった酸素が大気を満たすようになるには、なんと20億年前までかかりました。酸素が増えてくると、酸素呼吸をする生物が現れ、だんだんと生物の主流になっていきます。これは、酸素を使ったほうが効率的にエネルギーを引き出せるからです。酸素を使わない発酵より、酸素で酸化したほうが18倍もエネルギー効率がよくなります。

しかしこの時点で一つの難問もありました。酸素は基本的には生物にとっては毒だからです。人間でも、深呼吸をしすぎて酸素を多く取り入れる過ぎると、酸素毒で倒れることがあります。このため生物は、酸素がつくる有害物質を分解する酵素をつくるようになり、この危機を乗り越えたのです。やがて酸素が大気を満たすようになると、生物の中に陸に上がるものが現れてきます。しかし陸上生物の化石が発見されるのは4億年前からです。では酸素が大気を満たすようになってから生物が陸上に上がるまで、なぜそんなに長くかかったのでしょうか。

陸や空に生物がいなかったのは、太陽の紫外線が強かったからです。有害な紫外線のために生物は海の中だけで繁殖を続けていました。しかし大気中に酸素が増えてくると、酸素の一部はオゾンに変わり、大気圏の上のほうにオゾン層を作るようになりました。このオゾン層が紫外線を吸収してくれるので、陸や空にも生物が住めるようになったのです。実は、地球外から来る有害な宇宙は紫外線だけではありません。

放射線もその一つです。この放射線は、地球の磁場がつくるバンアレン帯で吸収されています。このバンアレン帯がなければ、生物はこんなにも栄えなかったかもしれません。地球というのは、生物にとって本当によくできたありがたい環境なのです。



『地球謎学』平川洋一郎 


加藤  |MAIL