加藤のメモ的日記
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2009年05月10日(日) 屋久島では

屋久島では、親しい友人の倉本聡さんと一緒にハムのコマーシャル撮りをした。この屋久島で私は再びあの巨大な杉の古木を何本か集め、手に触れることができた。林野庁による破壊の爪あとを、少なくも今までのところは奇跡的に危うく逃れてきた貴重な木々である。中でも最古の杉である縄文杉。これは樹齢七千年を超えているといわれ、ピラミッドよりはるかに古い時代の木である。しかも信じられないことに、この木は今もなお生きているのだ。私の心に映るその木は単なる木というよりも、まさに神そのものである。

ところがどうだ。現在その木のところまで、ロープウェイを作ろうという冒涜的な計画が進行中なのである。とんでもない話ではないか。神であるその木に会いたいならば、聖地を訪れる巡礼と同じようにそこまで歩いてゆくべきなのである。こんな巨木がこんなにも長いこと生き続けてこれたのは、たまたま人類がそれに手を出さずにいたからではなかったか。

それにしても、そうした古い大木の見事さは本当に信じられないほどだ。その巨大さ、高さ、そして樹齢の古さ。そればかりではない。そうした大木がそれぞれ小さな生物学的群落をなしているという素晴らしさ。この一本一本が、あらゆる種類のコケ、他の木々や灌木、昆虫やクモの類の宿主となっているのである。

今まで、こうした群落のいずれかをまともに研究した学者がいただろうか。私にはどうもそうは思えない。もしこの島でそういった研究がなされたならば、どんなに多くの未知の種が発見されることになるか想像もつかないほどだ。しかもなお、今も屋久島の処女林では伐採が続けられているのである。一般の人たちの目にはできるだけ触れないようにではあるが。


『森と海からの手紙』C・Wニコル


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