加藤のメモ的日記
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2009年05月08日(金) 犬は飼い主を選べない

身体的虐待を受けたがために、人間を信じられなくなり噛みつく犬、精神的虐待を受けたために心を閉ざし、何に対しても無反応になってしまった犬……。私はこういう犬たちを目の前にした時、この犬たちが人間に見えた。幼児虐待が増え、命までも奪われる子供たち。母親に何の期待もしないサイレント・ベビー、命を弄ぶとしかいいようのない犯罪など。

犬たちが見せる心の病は、まさに人間が抱える問題の縮図だ。抵抗すらできない弱い者へのいろいろな虐待は、加害者の心も被害者の心もそのどちらも壊してしまう。加害者になった人間だけを排除すればいいのか、というとそれは違う。考えなくてはならないのは加害者になった人間もまた心に深い闇を抱えている、ということだ。そして加害者になってしまった人間がすでに抱えてしまった深い傷と痛みをどう癒せばいいのか。誰もが持つであろう心の闇として考えていかねばならないと思う。

犬たちはその存在だけでも私たちを癒してくれる。しかし、いつからか、どこからか歯車が狂うように人はある日虐待を始める。人によって傷つけられ打ちのめされた犬たちは、しかし人によって救われ、心を癒していくしかない。そうして人に癒された犬たちは、まるでそれを返すかのように今度は人を癒し始めてくれるのである。人が犬を、犬が人癒すという、この永遠なる営みが本来あるべき人と犬との姿ではないだろうか。私たち家族が、かって彼らによって癒されたように。

……………

犬に追いかけられた場合、背を向けて逃げ出すのは得策ではない。犬より早く走る自身のある方は逃げてもいいがやめたほうがよい。こういう場面に出会ったら、襲ってくる犬のほとんどの目的は、自分の縄張りに入ってきた侵入者の追い出しである。侵入者が出て行ってしまえば追いかけるのをやめるのだが、相手が背を向けて逃げ出すのを見ることで、狩猟本能を引き出してしまう場合が多い。逃げ出す人間が侵入者ではなく「獲物」になってしまうのだ。

ではこういう場合、どのように対処すればいいのだろうか。唸る犬に出会ってしまった場合、一瞬立ち止まり、犬と目をあわさないようにし、ゆっくりと立ち去る。これしかない。飼い犬は家の回りを縄張りとし、それを変えることはないので、野良犬などより縄張り意識の強い場合が多いのである。特に去勢手術をしていない雄犬には要注意である。野良犬は人を避けようとするから、こういうことは起きづらい。


『心を病んだ犬たち』篠原淳美


加藤  |MAIL