加藤のメモ的日記
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アメリカでは、肉牛は科学的に根拠付けられたという方法で、年間約50万トンの穀物を消費しながら飼育されている。アメリカ中西部やカリフォルニア州では、牛は「フィードロット」と呼ばれる空調つきの巨大なホールの中で飼育され、一定時間がたつと自動的に穀物資料が与えられるシステムになっている。
なんと、牛たちは歩けない。決められた枠の中に整然と並ばされている。フィードロット一つに一万頭の牛を収容している。フランスの農業雑誌の試算によると、例えばザンビアで一年間に消費するトウモロコシの量は、カリフォルニアのフィードロットの牛の半数で、年間に消費する穀物量に匹敵するそうだ。ザンビアはトウモロコシを主食とする国の一つで、国民は慢性的な栄養不良に苦しんでいる。
つまり、牛のエサのために世界市場に流通する穀物が不足しているということである。牛のエサが国連食料計画の活動に影響を与えているとしたら、深刻な話である。しかし、エサの問題は真実の内の半分でしかない。貯蔵が可能な食料の価格は、大抵が人間の手によって操作されている。
自由主義市場で売り買いされている農産品のほとんどが、投機筋の動きに影響を受けている。アメリカのシカゴにあるミシガン湖のほとりには、輸入業務用の貯蔵倉庫が立ち並んでいる。「シカゴ穀物取引所」と名づけられ、世界の主要農産物が売買されている。そこでは、一握りの金融資本家が農産物を買占め、貯蔵倉庫にため込んでは市場価格を操作している。
国際的な穀物の商取引には、すべて「穀物メジャー」といわれる商社、昔でいえば「穀物商人」の手に握られている。アンドレSA(スイス)、コンチネンタル・グレイン(アメリカ)、カーギル・インターナショナル(アメリカ)、ルイ・ドレフェス(フランス)などだ。通称、穀物ビッグフォーと呼ばれるほんの数社が、想像を絶するほどの力を持っている。
彼らの商業艦隊が世界中の海を行き交っている。穀物メジャーは「ホワイトカラーのなりをした猛獣」にも等しいというわけだ。新聞の経済欄には大豆、トウモロコシ、サトウキビ、小麦、米、大麦、インゲン豆、キャッサバ、サツマイモなどの市場取引価格が毎日載っている。
『世界の半分が飢えるのはなぜ』ジャン・ジグレール
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