加藤のメモ的日記
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いまや野宿者に限らず、全国あらゆる相談者に対する福祉事務所の追い返しが問題になっているというべきだろう。全国の福祉時事務所で2004年度に受け付けた生活保護の相談件数のうち、実際に保護を始めた割合は平均28%。最低の北九州は14.6%。つまり全国で7割が相談にいっても生活保護の申請すらできない「門前払い」にあっている。
最後のセーフティーネットである生活保護が機能しないと、失業などで困窮した人はどうなるのか。最近しばしば指摘されるのは、セーフティーネットの最後の受け皿に「刑務所」がなっているということだ。食いつめた結果の不法行為ということである。
債務問題に詳しい宇都宮健児弁護士によると「多重債務になって逃げ出した人は、10万人以上と見られます。夜逃げすると住民票を移せない。そのため定職に就けない、健康保険に加入できないなど困難を抱えてホームレスになることを余儀なくされている。生活保護の壁は高く、ヤミ金融の方が身近に貸し出す社会は異常だ」と指摘している。いわば、サラ金と福祉事務所がタッグを組んで、ホームレスやその予備軍を次々と生み出している。という状況である。
日本各地で女性の野宿者が見られるようになっている。2006年の「虹の連合」による全国調査では、日本の野宿者に占める女性の割合は7%である。各地で襲撃の対象にもなっており、2006年11月には、愛知県岡崎市で野宿していた69歳の花田美代子さんが河川敷で頭や顔、上半身を鉄パイプで滅多打ちされ、肋骨が折れ脾臓が破裂して死んだ。
28歳の男と同市の中学二年の男子生徒三人が逮捕、補導された。これは日本で始めての女性野宿者の殺害だった。増加した女性野宿者に対応して、女性野宿者を支援するグループや、民間施設、そして女性野宿者の集まりも各地で作られつつある。
女性が野宿になる原因は、ドメスティック・バイオレンスをはじめとする家族間のトラブル、そして男性と同じく失業であるようだ。2000年次の報告では、現在豊島区には約250人の野宿者がいるが、そのうち女性は10人くらい。うち妊娠している女性が6人もいた。
1月下旬に会った東京都内の23歳男性は、うつ病とパニック障害があり、派遣先から解雇された。日雇い労働でしのいだがアパ−トの家賃を払えなくなり、福祉事務所に生活保護の申請に行ってみたが「働けるはず」と追い返されたという。彼の残金は3000円ほど。
両親は彼が幼いころに離婚しており、頼れる家族もいない。悠長に就職活動をしていてはアパートを追い出されるし、週給や月給の仕事では給料日まで暮らしていけない。だが、15〜64歳の稼動年齢層といわれる人の生活保護申請がすんなり通ることはまずない。
野宿者襲撃は次々と起こり続けている。そして若者の襲撃で殺されなくても、日雇い労働者は仕事がないというだけの理由で現実に次々と死んでいる。しかもそれは社会的に黙殺され、放置され続けている。
『ルポ・最底辺』生田岳志
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