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2004年01月18日(日)
「韓国民主化への道」岩波新書 池明観

「韓国民主化への道」岩波新書 池明観
「(韓国の国花ムクゲは)咲いては散り、散っては咲き、無窮に咲きつづける。いかなる逆境にも負けないしたたかさ。それが朝鮮民衆の姿であるといわれた。」と著者はいって、戦後からソウルオリンピックにかけての韓国の戦後史を明かにしている。戦後の冷戦を背景にした南北分断、李承晩の登場、朝鮮戦争、4.19革命、直後の朴正きのクーデター、金大中事件、全斗換の登場、光州事件、直接選挙の実施…。そのほとんどを(名前だけは知っていたが)その歴史的背景と事件の経過を私は知らなかった。隣の国の激動の歴史なのに……。

韓国抵抗運動のレポートを命がけで書いていた「韓国からの通信」(岩波新書)の著者T.K生は池氏だという事が最近明かになった。よってこの本は戦後史の概説書であると同時に、名も無き学生が書いた生々しい激ビラの文章や、詩人の命がけの「詩」などが多用されてあって、見事な民衆史にもなっている。客観的な歴史書などは存在しない。(違うという人はE.H.カー「歴史とは何か」を読んだ上で反論してほしい)私は運動のさなかから書かれたこういう文章を信用する。

韓国民衆は時に勝利し、時に沈黙し、87年の勝利までに本当に粘り強く闘った。長期の独裁政権のもとで、暴力に拠らずどうやって民主化を勝ち取るか、ここには見事な世界史的、歴史的な教訓が埋もれてある。もっと知られるべき本である。