江草 乗の言いたい放題
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2010年01月01日(金) ガストで日本経済について考える        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

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 12月31日、オレはオートバックスでカーオーディオの載せ替えをするために家を出たのだが、ネットブックを持っていたのでふと、ガストでドリンクバーでも頼んでインターネットしようと思って店に入った。いつもなら席まで案内してくれるはずの女の子が「空いてる席に座ってください」と焦った声で言ったとき、オレはまだ事態の重大さをわかっていなかったのだ。オレが席に着いたのが9:15くらいだったか。それから待つこと延々50分、10時を過ぎてやっとモーニングセットAのプレートが冷え切ったトーストと共に運ばれてきたのである。そこまで待たされれば普通ならさっさと店で出てしまうところだが、オレは店員の動きを見たり客同士の会話を聞きながらその状況を楽しんでいたのである。

 オレの隣のテーブルには老夫婦と思われるカップルが居た。オレよりも先に来ていたのだが、いつまで経っても注文したものが運ばれてこないことに愛想を尽かせたのか、席を立って帰ろうとした。店員が「もうできてるかも知れませんから・・・」と引き留めていたがそのまま帰ってしまった。また別のテーブルには家族連れがいたのだが、やはり帰ろうとしたところを店員に引き留められ、すぐにモーニングセットが運ばれてきたが、黒焦げのトーストだった。5歳くらいの女の子がそのトーストを触って「熱くない!」と言っていた。冷めてるトーストなんて論外だ。

 それがこの店のデフォルトだったのだろうか。オレの前に運ばれて来たトーストも、同じように焦げていて冷たかったのである。なぜ冷めているのに真っ黒に焦げてるトーストなんかを出すのだろう。そこで店員を罵倒してさっさと出てくればよかったのかも知れないし、そうしている客が居てもおかしくない。もうこの店は完全に終わってると判断してもいい状況がそこには存在した。フロアに居た女の子は2名である。厨房にはスタッフが何人いるのかは見えないのでわからないが、とにかく全然人が足りないということはわかる。テーブルの上を片づけるのも追いつかないのである。だからドリンクバーのところにコーヒーカップやグラスを補充するのも間に合っていないし、スープバーのスープはもう空である。これは誰のせいでもない。人手が足りないからこうなるのだ。

 外食産業は常に人手不足である。時給700〜800円程度のバイトはいくらでもいそうなものだが、人が集まらないのである。確かに労働のきつさを思えばそれも仕方がないのだろう。そして年末年始ともなるとふだんの戦力である主婦のパートはまず確保できない。大学生は帰省してしまっていたりする。だから人が全然足りないのだ。オレが店を罵倒することもなく静かにその状況を観察していたのは、この「いつまで経っても注文の品がやってこない」現象というのはこの店の固有の問題ではなくて、今の日本経済全体が抱える病だと思ったからである。

 不景気で街には失業者が溢れているが、その一方で人手不足に悩む業界はいくらでもある。農業や林業はそもそも後継者不足だし、漁業も従事者が減っている。不景気にあまり影響されない外食産業は大学卒の就職先としてはあまり人気がない。みんなが休みの土日に休めないからかも知れない。彼女と休日が合わないとろくにデートもできないだろう。そんな単純な理由だけではないかも知れないが、今の就職難というのは明らかに就職を希望する者と実際の求人とのミスマッチなのである。文部省が大学設置をどんどん認可して街にFランク私大が溢れてしまったこと、入学試験の偏差値が高かったはずの大学が定員をどんどん増やして学生の質を低下させたこと。工業科や商業科などの職業科の高校が減って全日制普通科ばかりになったこと。そうした教育行政の側の問題が大きいのである。

 社会にはさまざまな仕事があって、誰もが冷房の効いたオフィスでデスクワークするホワイトカラーになれるわけではない。炎天下で交通整理しないといけないガードマンもいれば、おいしいパンを焼くために毎朝3時に起きている人もいる。これだけ街にクルマが走ってる以上、自動車整備士がいなければ話にならない。この世のどんな仕事も社会には不可欠なのであり、一流大学卒といった学歴がなくても自分が選んだ仕事のプロになることでしっかりと誰もが自己の存在価値を見出だすことができるのだ。

 ファミレスを運営するのは大変だ。来店するお客を円滑に処理するために必要な人員は何名かをきちっと判断して、必要な人員を確保するために最大限の努力をし、いろんな年齢のバイトを組み合わせて時間と曜日を調整して常に店をベストの状態にするにはある程度の調整能力が必要である。難関大学を出ても不況のせいでなかなか希望する企業には入れないと嘆く若者が多いが、その一方でいい人材が集められないためにひどいレベルの商品しか提供できないファミレスがある。

 トヨタや三井物産や三井住友銀行への就職を考えていた若者は、サイゼリヤやゼンショーや吉野家やファミリーマートなんて考えたこともないだろう。しかし、そうした外食産業やコンビニの幹部は中国という世界最大の市場に進出して12億の人民相手のビジネスを考えているのである。もしかしたらトヨタよりもはるかにすぐれた成功戦略をすでに準備してるかも知れないのである。日本の接客業のレベルは世界最高だとオレは思っていた。しかし、そのレベルを維持するために必要なのは中学高校を遊び暮らし、その上さらにFランクの大学で4年間遊んだどうしようもない馬鹿ではなくて、中学や高校の段階からきちっと職業教育を受けた人材ではないのか。いい指導者の下での部活動を経験してチームプレイの大切さを理解しているハートウォーミングな若者たちではないのか。幼い頃から親の働く姿を見て育ち、他者のために苦労することをいとわない奉仕精神溢れる若者ではないのか。今の教育はそのために機能しているのか?否である。中学や高校が2極分化し、一方は受験のためのただの予備校となり、もう一方は勉強なんかろくにやらないで授業中も漫画を読んだりDSやPSPで遊んだりメールを打ったりしているニート養成所となっているのが現状である。

 高校の定員の半分近くが職業科だった時代、工業科を出れば大手自動車メーカーから町工場に至るまでちゃんと就職先があった。商業科を出れば百貨店や総合商社に入れた。高卒でトヨタ自動車に正社員として就職すれば、定年までの安定した人生は保証されたようなものだった。20年以上前にオレが公立高校の進路指導室にいた頃、トヨタ自動車の求人担当の方がお見えになって「このあたりの方は縄文時代からそのまま住んでるのでしょうか。愛知になんて来てくれませんわ」と吐き捨てるようにおっしゃった。普商工農なんて序列を誰が言い出したのだろうか。普通科ばかり増設しても誰もが大学に入るにふさわしいわけではない。分数のできない大学生がいる現状を見ればその方向性が間違っていたことは明らかだ。どうして大学入学者数を世代人口の20%くらいに絞らなかったのか。だったら大学卒はもっと価値あるものだったし、高卒で就職することはごく普通のことになったのだから。

 なぜ大企業が高卒を採らなくなったのか。高卒で就職しようという人材のレベルが低すぎて必要なニーズを満たせないからである。だったら大卒や短大卒を採ればいいのかというと、人間として大切なものが欠けていたりするのだ。教育の崩壊がそのまま今の大失業時代、ニート大発生時代につながってるのである。そして教育が崩壊したのは国の教育行政に決定的な誤りがあったからだとオレは思っている。ゼニの掛かる塾や予備校を放置し、国立大学の授業料を値上げし、貧富の差がそのまま教育の結果に反映する状況を黙認してしまったことだ。なぜそんなひどいことをしたのか。その結果どうなるかを誰も予測できなかったのか。どこまでおまえらは馬鹿だったんだよとオレは昔の文部官僚どもに怒りを覚えるのである。

 戦前の師範学校(今の国立大学教育学部の前身)は授業料が不要だった。そのため師範学校の学生はその多くが貧しい階層の出身だった。貧しい階層の中で努力して勉強したものが教員となったから、弱者の痛みがわかるよき教師になれたのである。貧農の子弟であってもがんばって勉強すれば小学校や中学校の教師になれたのだ。文盲率をほとんどゼロにできた戦前の日本の教育レベルは当時世界一だったとオレは思っているが、それを支えたのは貧しい階層出身だった教師たちだった、

 誰もがホワイトカラーとして就職できるわけではない。医師や裁判官のように高い知的能力を必要とする職業がある一方で、職人的な技術や手先の器用さを必要とする職業、体力や忍耐力を必要とする職業、思いやりや奉仕の心が必要な職業など、どんな仕事にもその職業に応じた専門性と訓練が必要であり、個々人が自己の適性を知るために中学や高校の6年間を機能させるべきなのである。みんなが同じ方向を向いて努力する必要など全くないのだ。

 「希望する仕事が見つからないから」と生活保護を受けている元気な失業中の若者がいる。ろくに技術も能力も持たないくせに「そんな安い給料では働きたくない」と家に引きこもってネットゲームにはまって廃人になる若者もいる。どうしてこんな状況になってしまったのか。今から教育を建て直そうとしても結果が出るまでには20年くらい掛かるだろう。そんな長期的な視野に立った教育政策など誰も打ち出せない。大臣の任期はせいぜい1、2年だし、みんな目先のことと天下り後の余生しか考えていないからだ。ガストでいつまでも来ないモーニングセットを待ちながらオレはこんなことを考えていた。オレにとってはその意味のない待ち時間さえも思索のための有益なひとときであった。


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