江草 乗の言いたい放題
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2006年02月27日(月) ハメこまれた人たち・5        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

 投資の際に個人投資家が参考にする情報というモノは、すべて公正な立場から発信されているとは限らない。その情報をいつ出すかというタイミングには明確な作為が存在する。また、証券会社が自社の推奨する銘柄の価格をつり上げるために御用記事を書かせることなど日常茶飯事である。もっともこれは本当なら「証券取引法違反(風説の流布)」という犯罪になってしまうのだが、実際の株価の動向は9割方そうした風説によって支配されていると言っても過言ではない。今回紹介するのもそうした「情報操作」によって個人投資家が無惨にも財産をなくした実例である。
 
 
大和紡績(3107)はかつては1000円以上になったこともある伝説の仕手株だが、1998年以降は長らく100円台の株価に低迷していた。2005年夏にクールビズ関連で繊維株が上昇したときも蚊帳の外に置かれていた。ところが10月に入って200円台に上昇し、その後も緩やかに上昇した後11月下旬になって上昇幅は徐々に拡大した。11月24日の終値は224円だったが、12月2日には300円台を突破した。

 当初、大和紡績のこの動きは繊維株が全体に上昇する中で他の銘柄に連れ高していると見られていた。上げ下げしながらの緩やかな上昇チャートの中で出来高も一気に拡大した。ただ、不審な動きはあった。不自然に大きな買い注文が常に存在し、個人投資家の買い安心感を誘っていたのである。値動きのよさに個人投資家は飛びつき、株価はさらに上昇していった。しかし、実はもっともっと大きな隠し球が用意されていたのである。その背景は鳥インフルエンザの流行だった。

 鳥インフルエンザと繊維株、一見何の関連もなさそうなこの二つの事象が結びつく理由となったのは、大和紡績が開発中の不織布がウイルスを99%除去できるという情報が流れたからである。それをマスクにするだけで鳥インフルエンザ感染を99%防御できるということになる。これはビッグサプライズだ!市場を駆け抜けたこの報道によって大和紡績の株価は12月22日547(+80)円、12月26日647(+100)円と連続ストップ高になったのである。まさかそんなに上昇するとは誰も思わない。この大和紡績株がまだ400円台だった頃に大量に空売りしてしまった兄弟がいた。2ちゃんねるなどで「ダイワボウ兄弟」と書かれて話題になっていたのだが、この大幅高で彼らの損失はたちまち2000万近い状況となり、12月27日になってやっとストップ高しないで寄りついた日に損切りして彼らは退場していった。

 「株を買う者は財産を失うが、株を売る者はを失う」という株の世界の有名な言葉がある。空売りが失敗した場合、その損失は無限大だ。彼らがそこで2000万円の損失で食い止めるために手仕舞いして退場していったのも理解できる。そして鳥インフルエンザの流行は世界的な現象である。このまま株価は1000円を越えて行くものと誰もが信じ、空売りしてしまった個人投資家はこのまま年を越すことの恐怖に耐えきれずに次々と返済買いして損失を確定し、この勝負から手を引いていったのである。いわゆる「踏み上げ相場」がまぎれもなく発生していた。

 大納会の日、12月30日の取引は午前中しかなかった。そのわずかの時間に大和紡績は瞬間的に898円の高値を付け、終値は862円だった。100円台のぱっとしない繊維株はついにここまで上昇してきたのだ。しかし、年明け1月4日大発会の日、大和紡績は762(−100)円というストップ安だった。

 この銘柄を安値で仕込み、そして鳥インフルエンザ関連で煽り立て、個人投資家の買いを誘って値段をつり上げた仕手筋と呼ばれる機関投資家たちは、実は年末の最高値を更新したときにほとんど売り抜けていたのである。それは年明け後出来高が激減したことからも明らかだ。鳥インフルエンザ関連のニュースを聞いてから動き出した多くの個人投資家は、一番高いところでこの銘柄を買ってしまった、つまり「ハメこまれて」しまったのである。

 その後も大和紡績の株価は徐々に下がり続け、1月18日のいわゆるライブドアショックの時には542円まで下げたのである。誰もがもう完全に終わったと思ったが、ライブドアショックから多くの銘柄がすぐに立ち直ったのを受けてこの大和紡績も再び上昇し、そこで多くの個人投資家からは「底打ち完了」「再上昇」の期待を込めて再び買われることとなった。まさかその後に再度の悲劇が用意されていたことなど、インサイダー情報を知り得ない多くのまっとうな個人投資家には思いも寄らないことであった。2月7日の株式新聞には、「ダイワボウの鳥インフルエンザ用不織布に注目」という見出しが出た。まさかそこで大株主の東京三菱UFJ銀行が売り抜けていたとは誰も気づかなかったのである。悪意に満ちたうがった見方をするならば、そのニュースは東京三菱の売リ抜け用の御用記事だったかも知れないのである。解体相場を仕掛けるためにこの使い古されたニュースを出してきたとしか思えないのである。まあそういうのはゲスの勘ぐりなんだが。

 2月10日に発表された大和紡績の四半期決算は49%の減益だった。それを受けて週明けの2月13日は463(−100)円のストップ安、翌2月14日には387円まで売り込まれることとなり(終値は505円だから42円の上昇)一番高いところで買わされた個人投資家の買値の半値以下に下げたのである。この悲劇のチャート(←クリックすると開きます)を見て欲しい。

 四半期決算が悪いことはすでに昨年の暮れには予想されていたはずである。その銘柄が急上昇するようなニュースを意図的に流し、一番高くなったところで売り抜けてから今度は空売りを入れるという方法で巨額の利益を得た人間、つまりこの大和紡績の株価操作で儲けた人間は株式市場のどこかに必ず存在するのだ。ライブドアの堀江社長以下幹部は証券取引法違反で起訴されたが、大和紡績の株価を操作して巨額の利益を得た人物は「まっとうな株取引で上げた利益」であると主張するだろう。彼らがどんなルールを破ったのか、どんな不正な手段を用いたのか、残念ながら日本でそうしたことを取り締まるシステムはあまりにも脆弱である。ほとんど存在しないのと同然だ。

 実際のところ、個人投資家は情報の量という点で圧倒的に不利な立場である。最初から大きな情報格差というハンデのある中で、機関投資家や外資と同じルールで戦わないといけないわけで、普通に考えれば勝てるわけがないのである。ネット株取引に個人投資家がどんどん参入し、デイトレーダーと呼ばれる人たちも増えて出来高も膨らみ日経平均は大きく上昇した。ところが2005年の年末に1万6000円台をつけた日経平均はその後は停滞している。それまで日本株を買い越してきた外資も売りに転じる流れが起きている。

 「普通なら株を買わないような人までみんな株を買うようになったときに相場は終わる」と言われる。もう買う人がいなくなるからだ。今年になってから参戦した個人投資家の多くは含み損を抱えた戦いを強いられてるはずである。多くの企業が2005年に最高益を更新し、普通に考えれば株価は年明けからも右肩上がりに上昇するはずだった。しかし、もしも今の株価がピークであり、今の株高が作為的なモノであったとしたら、最後に参入してきた多くの個人投資家は、今後絶望的な撤退戦を繰り広げなければならないのである。財産を失った多くの投資家が死屍累々と横たわる荒野をオレは想像したくない。しかし、明日のことは全く予想できないのが相場の世界である。

 昨年12月末には「3月には日経平均2万円突破だ」と強気の予想をした証券アナリストがかなりいたのは事実だ。今、そんな楽観的なことを語る者は誰もいない。

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