
|
 |
| 2003年01月14日(火) ■ |
 |
| もぎり球児の夏 |
 |
チゲ鍋うどんはまずかった…。こんばんわ、あるこです。久しぶりに真面目に野球ものを書いて見ようと思います。では、2002年7月梅雨が明けきらない京都にタイムトリップ〜♪
バックネット裏にも屋根がない小さな地方球場に、またポツリポツリと雨が降り出した。昼過ぎなのに、空は暗い。このところ不安定な天候が続いているにもかかわらず、何の対策も講じていなかった私は傘すら持っていない。愛用の緑のリュックが段々深い色に変わっていく。頭のてっぺんから、頭皮を伝って、生ぬるくなった雨水がつぅーっと額を滑り降りる。
雨宿りする場所ならある。地元高校の部員が球場入り口でチケットのもぎりをしているのだが、そこにはテントが張られているのだ。畳一畳分くらいのスペース。午前中は、雨が降り出すとそこで雨宿りをさせてもらった。試合中、人の行き来ないのをいいことに、白いユニフォームを着たもぎりの野球部員たちは素の高校生に戻って、たわいもないおしゃべりに花を咲かせていた。「勉強嫌いな人、手ぇ挙げて〜」、「今日、終わったら、練習あるの?」、「お弁当、何が入ってるんやろ」。たまに客がくれば、「こんっちわ」と応対するも、恥ずかしいのかダルいのか知らないが、深夜のコンビニによくいる愛想の悪いバイトの兄ちゃんを彷彿させるものがあった。気が抜けると高校球児もこんなもんか。安堵感と小さな失望感が入り交じった。
けれど、席を立てずにいた。目の前で、高校生が熱戦を繰り広げている。すごい投手がいるわけでも、派手な試合でもなかった。でも、私はのめり込んでいた。このままずぶ濡れになってもいい。この試合を見届けるんだ。誰に頼まれたわけでもないのに、妙な使命感に燃えた。雨は変わらぬペースで降り続けた。
長い試合が終わった。感動より先に脱力感に襲われた。気持ちが落ち着くと、急に寒気に襲われた。あわてて、入り口近くのテントに駆け込んだ。腕についたしずくを払っていると、観客が続々と出てきた。ダレダレモードだったもぎりの部員たちも、姿勢を正した。
負けたチームの父兄さんや応援団が出てきた。手には大きな太鼓やみんなに配ったジュースが入っていたであろう発泡スチロールの箱。ややうつむき加減、赤い目をしている。もぎりの部員たちは、「ありがとうございました」と棒読み口調で言う。見送られる父兄さんや応援団は、「お疲れさまです」「ありがとうございました」と返し、テントをくぐり抜け、球場を後にしていく。
子供に、チームメイトに、託した夢がついさっき終わった。そんな精神状態の中で、出る言葉に驚いた。でも、そう言いたい気持ち、わからないでもない。負けたこと、夏が終わったこと、夢が終わったこと。悲しいし、辛いし、悔しいかもしれない。でも、素晴らしい試合だった。だからこそ、その周りにいる人や物、景色にすら感謝の言葉を口にしたくなる。全てを許せる心の広さというか、澄み切った青空というか、ゼロに帰った気持ちというか…。
ところが、もっと驚いたことがあった。気付くと、もぎり部員の一人が、「ありがとうございました」「ありがとうございました」と明瞭な言葉で、出ていく観客一人一人に頭を下げていたのだ。気持ちは伝わる。人を動かすんだなあ。体の絞り切れていない、ポッチャリした彼の背中を見ながらそう思った。
気付くと、雨はあがっていた。
|
|