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| 2002年10月17日(木) ■ |
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| 見ているから言えないこと、見ていないから言えること |
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秋季大会準決勝、平安高校が敗れた。決勝点はエラーが絡んで入った。エラーが出た瞬間、平安高校ナインの動きが止まった。思わず歯をかみしめてしまった。これで試合が決まったんじゃないかという勝負のあやに対してではなく、「この子ら、試合後、どうなるんだろう」ということが予想ついたからだ。私は、そっちの方がずっと怖い。
春先に、センバツ帰りの平安高校の練習試合を見に行ったことがある。府外の学校との対戦だったのだが、結果は逆転負け。京都では無敵の強さを誇っていた平安が、こんな形で負けるんだあとちょっと驚いたのだが、それ以上にびっくりした光景が試合後にあった。
グランドを出るときのルートの関係で、平安高校の選手達がいるベンチのすぐ側を通りかかった。負けたというだけあって、監督の声が荒い。「もっとやる気が出えへんのか」とか「下級生がまるで人事のような態度でいる」とかそう言った言葉が耳に入ってきた。試合後のミーティングって、案外技術的なことは言わないのかもしれない。
よく見るミーティングの光景は、選手たちが半円の輪になり、監督と向き合って立っているか、体育座りをしているというものだが、この日は、選手たちと監督の間で、正座をしている選手が2人いた。2人は黙ってうつむいていた。
うわ、この子らさらしもんかいな、かわいそう。見てはいけないような気がした。でも、足が止まってしまった。以前に平安高校のグランドへ行ったときもそうだったのだが、背筋がぞっとした。
一般の高校生が遊んでいるような休日。彼らは叱られてすごしている。叱られるって、悔しいし、辛いし、恥ずかしい。それに、私のようなファンの好奇の目にもさらされてしまう。ま、彼らはそれどころではないのだろうけど。
その後すぐ行われた春の近畿大会で、平安はよもやの初戦敗退を喫した。巷では、厳しい評価がくだる。たいして試合を見ていない若い子が、「高塚は春になって、下手になっている」と言った類のことをネットで書き込んでいるのを見た。以前なら、頭に来てたかもしれない。でも、今回は違った。あんな叱られ方しても、がんばっても、結果が出なかったらそれが全てなんだな。それがちょっと悲しかった。
でも、どうだろう。私もあの光景を見ていなければ、きっとその子と同じことを思ってたかもしれない。だから、その子を責める気は一向にないし、下手な同情は返って選手を苦しめる。でも、正座をしてじっと耐えている少年を見てしまったら、誰がそんなこと言える?それでも言わなきゃいけない人もいるけど、少なくとも私はそんな立場じゃない。
それ以降、平安高校を見ると、どうしてもグランドに立っている選手の正座姿やじっと耐えているときの顔を思ってしまう。
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