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| 2002年10月10日(木) ■ |
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| 自分が悔しい |
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大事な試合で痛恨のエラー、失投、見逃しの三振、走塁ミス…。活字上の選手たちは、自分のせいで試合を落としたことを申し訳なく思うコメントをしている。高校野球あたりになると、それに涙がプラスされる。でも、ほんまにそれだけ?、と私は思うのだ。
私は学生時代約2年間、ラーメン屋でアルバイトをしていた。あれは忘れもしないバイト最後の1月のある日。調理スタッフから手渡されたチャーハンとスープのセットをテーブルに運んだ。なんてことない動作。ところが、テーブルにたどりついたとき、何かの拍子でスープがカップから飛び出した。あちゃ。顔を覆いたくなったが、そんなことよりすることがある。
スープは若い男性会社員のスーツを濡らした。男性は一瞬「熱っ」と声を挙げた。私は慌てて厨房に戻りタオルを取ってきた。濡れていた場所は男性の足と足の間。つまり大事なところ付近。でも、パニクッている私にそこまで考える余裕はない。タオルを濡れている場所に持っていこうとした。すると、同席していた年輩のおじさんが「姉ちゃん、がんべんしたってぇや。そこはヤバいやろ〜」と笑った。そのとき、初めて自分が何をしようとしていたのか気付き、慌ててタオルごと男性から離れた。彼は、小さく微笑みながら「大丈夫だから」と私を気遣ってくれた。私は「申し訳ございません」と何度もお辞儀をした。
汚れたタオルを蛇口で洗っているとき、私の脳裏によぎったのは、「よりによって、最後の最後でこんなミスするなんて…」という自分に対する悔しさだった。
元来、おっちょこちょいのため、ミスが多かった。注文の取り違い、レジの打ち間違い…。あまりにひどいため、女だてらに店長にしばかれたことすらあった。でも、料理をこぼしたことだけは一度もなかった。他の女の子はバイトを始めたころに、重さに耐えかねて、こぼしてしまうという洗礼を浴びていたのだが、何故か私は経験がなかった。おっちょこちょいなりに神経を使っていたのだろう。それが最後の最後で、この始末。お客さんの前でこぼすなんて、他にやった人見たことない。やっぱり、私はあかんのや。
落ち込んだ。正直、こぼしてしまった男性に申し訳ないという気持ちよりも、最後の最後でしたことないミスをしてしまった自分に対する悔しさの方が先にたった。自分はなんてエゴイストなのだろうと思ったのは、それから少し経ってからである。
そんな経験があるが故に、ミスをした選手に対する思いはちょっと複雑だ。特に普段守備がいいとか好投手とか言われていた選手は、「普段は出来ているのに、なんでこんなときに!」とか思っていないのかな?という疑問が湧く。もっとも、たとえそうだとしても、マスコミ相手にそんなエゴイスト発言は出来ないんだろけど。
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