初日 最新 目次 MAIL HOME


あるこのつれづれ野球日記
あるこ
MAIL
HOME

2002年08月20日(火)
時効


 新しい仕事、疲労感は抜群ですが、段々と慣れてきました。一緒に働くスタッフは、毎日変わります。よく会う子もいれば、初めて会う子もいる。1話完結型のドラマのような人間関係が展開されます。

 繁忙期ということで、短期バイトの学生さんが大半なので、当然年下の子ばかりです。やはり世代の違いを感じてしまうのですが、この世代と関わりのない私のとって、彼らの話は聞いているだけでもなかなか面白いのです。

 この時期だから、高校野球の話題が展開されていても何らおかしいことはないのですが、なんか不思議な感じがしました。当然周りは私が野球好きである(それもおかしいくらいにのめり込んでいる)のを知りません。トークは私とは関係ないところで展開されてました。

 高校出てたの若い女の子が、「明徳義塾、嫌い」と言いました。家族が応援してはいけないと言うのだそうです。すると、話を聞いていた二十歳前半の男の子が、「なんや、自分、石川県民?」と訊いてきました。この日記をご覧いただいている方なら、この会話がつながっていることをおわかりいただけるかと思います。

 ところが、その女の子は、「ううん、ちゃうよ」と首を振りました。そのあと、「この人、何言ってんの?」みたいな表情をしていたのです。そう、彼女は、家族がどういう意味を持って、“応援したらあかん”と言っているのかわかっていないのです。10年前、9歳だった少女が、あの事件を知っている方が違和感があるように思いました。

 あの事件、社会現象にまでなった事件。当時高校2年生だった私もTV画面に向かって、下品な言葉を叫んでいた。今ではだいぶ冷静になり、ただ松井選手のすごさだけが浮き彫りになったような印象程度しかないのですが、ずっと多くのファンと同様に、明徳に対してマイナスイメージを持っていました。

 ところが、月日というものは確実に過ぎているのです。その6年後のチームは、寺本選手や高橋選手らが、若い女の子を始め、多くのファンを作りました。彼女らにとって、五敬遠事件など何処吹く風。それから更に4年経った今、敬遠事件を知らない子がもう当時の彼らより年上になりました。

 もう時効でいいんじゃないかと思います。

 仕事を終え、家に帰ると、母が「明日の決勝は、智弁和歌山と明徳やで」と教えてくれました。10年一昔、あの夏、観客のブーイングにかき消された校歌が、今度は広い甲子園に高らかに響き渡ることを願います。