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| 2002年08月04日(日) ■ |
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| 私は、書くこと。 |
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瞳がカメラレンズだったら、どんなにかいいだろうと思う。まばたきがシャッターで、写し出されるのはその直前のシーン。自分が視界に捕らえたものがそのまま画像となって残る。ピント調整もトリミングも、色調補正もいらない。便利だし、きっとすばらしい映像にすばらしいカメラマンがもっとたくさん出てくることだろう。こんなことを言ったら、写真愛好家に叱られそうだけど。
昨秋からデジカメを持参して、野球観戦をしている。元々は応援校の選手を撮って、HPに選手名鑑みたいにして載せたいというのが目的だったのだが、残念ながら持っているカメラの品質ではそれは不可能(距離があると、すぐピンボケする)だった。もっといいカメラ、もっといいレンズを購入すればいいのだが、お財布と通帳がそれを許してくれない。
それに、グランド内の光景はプロ・アマ問わず実に多くの野球愛好家がフィルムに収め、ネット等で公開している。見れば見るほど、とてもかなわないと思う。とうていかなわないものに、ないお金をかけるのもどうかと思った。それなら、撮れる範囲にあるものを撮ればいい、そう思った。というわけで、今ではグランドの片隅にある光景を撮ることに専念しているだが、正直まだグランド内を撮ることに未練がある。
先日、甲子園大会の公開練習を見に行った。ノック練習をしていた。ノッカーから放たれた打球は低い弾道を描いて、サードへと向かった。サードは、グラブが地面に軽く触れるような感じで構え、すくい上げるように捕球したのだが、そのとき、グランドの黒土も一緒にすくってしまったらしく、黒土の粒が、60°の扇を描くように飛び散った。きれいだった。土をきれいだと思ったのは、グランド整備されたプレーボール直前しかない。まばたきでシャッターを切り、私の脳裏にはかなり鮮やか映像となって残っているのだが、残念ながらみなさんにお見せすることができない。
あーあ、シャッターチャンス逃しちゃたよ〜。そう思ったのだが、それもつかの間。これまで何回も、目で見たシーンと現像されたものとのギャップに愕然としている。どうせ、今度のもピンボケだったはずさっ。そう思い、気持ちを切り替えた。
どんなすばらしい文章も、たった1枚の写真にはかなわない。その事実をつきつけられる度に、文章を書くことがバカらしくなるときがある。でも、私は撮影する人ではなく、書く人なんだろうなと漠然と思う。
デジカメを持ち始めたころ、グランド訪問をした際にいたるところの写真を撮った。それでより詳しいもの、よりよいものが出来ると思った。でも、それは違った。“写真におさめているから”という事実がどこかで気を抜くことを許していたようで、思ったような文章が書けなかった。また、知らぬ間に文章の手抜きをする自分がいた。シンプルと手抜きはまるで別物だ。
年々衰える視力だが、目はデジカメより視界が広い。撮影するのも好きだが、今後はその頻度を減らして、目で被写体を捕らえ、まばたきでシャッターを切った脳裏にあるネガを文字で現像することに挑戦していきたい。その文章を読んでくださった方の脳裏にパッとその光景が浮かんでいたら、最高だと思う。たとえ、それが私が思い描くものと違っても。
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