::心理ゲーム(フルーツバスケット) 2002年08月06日(火)

「あ、あ!こ、殺されちゃうよ・・・!」
「大丈夫ダイジョーブ。ホラ。」
「あ・・・ほ、ほんとだ・・・。
 よ、よかったぁ・・・。」


「うわぁ、なんでここに牛が来てる訳ぇ!!?」


ことの起こりは学校帰り、偶然会って一緒に歩いていたとき。
彼女は彼に


お兄ちゃんは何が好き?


と聞き、彼は


ゲーム


と答えた。


私、ゲームってしたことないんだぁ・・・
・・・おもしろい?


うん、楽しい。


そこで本家についた。


それから彼が、何か荷物を持って彼女に家へ現れたのは
数分後のことだった。


「よぉ、燈路・・・。」
「よぉじゃないよ、よぉじゃ!!
 しかもなんでゲームとか杞紗の家でやってる訳!?
 自分の家でやればいいじゃないか!
 そんぐらいのこともわかんない訳!!?」
「あ、それは私がやったことなくて、
 そしてら、持ってきてくれて・・・。」


嬉しそうに語る彼女の顔は、彼の感情を黒く染めるモノとしては
最良の逸材だった。




自分のためではなく。




自分ではなく。




そう、彼女が想いを寄せているのは




「とっても楽しいの。
 だから、燈路ちゃんも一緒に・・・」
「・・・っかじゃないの?」
「え?」




くやしい。




どうして




どうして自分ではなく、彼なのか。




「何で家に男なんて入れるんだよ!
 しかもコンなヤツ!!」
「や、それはおまえも一緒・・・」
「うるさいよ牛!!」


とりたて彼は気にしていない様子で
これはヤキモチだってことは、
すでに知られているようで



余裕で



さらにむかつく。



「何かあったらどうするとか考えない訳!?
 こんなヤツ、杞紗に何するか、わかんな・・・」



パシッ



一瞬の静寂



ゆっくりと、ほおを押さえる小さな手。



関心なさげにしていた彼も、目を見開いてこちらを見た。



「杞・・・。」
「それ、以上、言ったら・・・
 燈路ちゃん・・・でも、怒る・・・よ・・・?」


ぎゅっと手を握りしめて、大きな瞳には涙をためて。
いつもは八の字になっている眉を、逆さにして。



初めて見た姿




「あ・・・」


何も言葉が出ず、駆けだしていく。


「杞紗・・・。」
「ごめんね、お兄ちゃん・・・
 燈路ちゃん、いつもはあんなこと、言わないのに・・・。」


コントローラーを下に置き、右手で涙をぬぐってやる。


「イヤ・・・。」


ポンポンっと頭を軽くたたいて、
こちらに引き寄せる。


彼女は彼の服をハンカチ代わりに
声を押し殺して涙を流す。




傷ついたのは、彼女の方。




俺の、代わりに。




「あんがと・・・。」




こんなことをして、
あながちあいつの言ったこともウソじゃないかも、
と思いながら


彼女の涙が止むのを待った。




「落ち着いた?」
「ん、だいじょうぶ・・・。
 ご、ごめんね?」
「んーん。
 じゃ、続きやろ。
 杞紗もやってみる?」
「え、わ、私・・・?」
「大丈夫、二人でも出来る。
 どうする?」
「・・・やる!」








「牛!!」
「・・・?」
「さっきは・・・悪かったよ!」


そう告げて、返事を聞かずに駆けだしていく。
小さくなっていく彼の後ろ姿をぼんやり見つめながら、


「でも諦めないって・・・ね。」


ふ、と笑った。


「絶対負けない。」





ゲームをしようか。
僕らのお姫様をかけて。



泣かせたりしたら負けだよ?



僕らの小さな心理ゲーム。





-----------------------------------------(作成・7月25日
                      Up・8月6日)

 






::BACK     ::INDEX     ::NEXT


My追加


     
::HOME ::MAIL