::ここにいる君、そこにある優しさ。(聖剣LOM) 2002年07月26日(金)

「会いたくなっちゃって。」







「・・・は?」
「だーかーら、瑠璃に突然会いたくなっちゃったから・・・
 だから・・・
 会いに来たんだってば!!
 何か文句あんの!!?」
「や、べ、別に・・・。」


意外だったから。
こっちから行くことはあっても、滅多に向こうから来ることはなかったから。


「だって、最近来なくなったし・・・。」
「それは色々忙しくて・・・。」
「・・・・・」
「あ、や、悪かった!!」


その様子を、窓越しに、さも楽しそうに(厳密に言えば、その中の一人は仏頂面をしているが)眺めている二組の騎士と姫がいた。


「相変わらず優しい馬鹿だな・・・。
 別に自分が悪いわけではなかろうに・・・。」

涼しい顔をした男がふぅ、とあきれたように息を吐いた。

「そこが瑠璃の良いところなのでしょう。」
「見てるこちら側としては楽しいがな。」

二人、顔を見合わせて微笑む。

「まったく、呑気なものだな・・・。」
「平和で良いことではありませんか。」

小柄の少女は、嬉しそうにいい匂いのする紅茶が入ったカップをテーブルに並べる。

「ありがとう、アクア。」
「貴女の入れるお茶がやはり一番おいしい。
 良い騎士を持ちましたね、サフォー?」
「そ、そんな・・・///」
「マリーナにはそれくらいしか脳がないからな。」
「またそんなこと言って。」



優しい町、優しい人たち。
暖かい空気、オレンジ色の空。


汗まみれになりながら駆け巡る日々。
真っ白だった紙の上に積もり重なる歴史達。


あまりにも目まぐるしく変わっていく中、


独り、取り残されているような気がするのは


気のせいだろうか?




みんな、みんなもう私がいなくても大丈夫。
成長した。
心も体も大きくなって
優しくなった。


でも、喜びとともに淋しさも溢れてきて




自分勝手だなって、自分でも思うんだよ。
でもね、無性に淋しくなっちゃうんだ。


もう必要ではなくなった自分。


そんな時、キミが側にいてくれたら。
キミの声を、暖かさを、優しさを感じることができたなら。




「久しぶりィ・・・。」
「うん?あ、ああ・・・久しぶり。」
「うん、うん・・・うん・・・・・。」




ただ二週間くらい会っていなかっただけで
こんなになってしまう。
なんて弱い。


困ったように笑うキミ。
いつからそんなに優しくなったの?


自惚れてもいい?
あたしのおかげなんだよって。
自惚れてもいいですか?




「淋しくなったら、また会いに来るよ。」
「・・・淋しかったのか?」
「・・・うん。」
「そっか・・・ごめんな。
 俺も、ちょくちょく会いに行くから。」




ただ、手をつないでいるだけの幸せ。
淡雪のようで儚い、
でも、
とても暖かい。




不器用なキミと、素直になれないあたし。




でもホラ、こんなに心地よい風。







「お前達も、彼らくらいスナオならいいのにな。」
「??」
「なんのことだ?」
「自覚なしですか。それもまたよろしい。」

楽しみがまた一つ、出来ましたねと微笑む彼の女神。




窓の向こうからは、微かな春の馨り。




淋しくなったら、また逢いにきて。
僕はいつだって、ここにいるから。





                  作成日・7月26日
                   Up時・7月27日  



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