サッカー観戦日記

2020年02月11日(火) 和歌山県1部リーグ 海南−和工 和歌山南陵−粉河

和歌山県は長らく初芝橋本・近大和歌山・和歌山北3強時代が続いていた。4番手に食い込もうとする高校は何校かあったが3強の壁を崩せなかった。たとえば近大新宮は高校選手権予選準決勝でPK戦まで行ったことがったがやはり崩せず。和歌山3強に続くレベルのあると思われるのが近大新宮・海南・橋本・和歌山工・粉河、それに休校状態から最近強化を始めた和歌山南陵あたりである。逆にかつての和歌山1強だった新宮は昨年の和歌山県1部リーグで悲惨なスコアで大敗を続け没落が激しい。ナンバーツーだった新翔も冴えない。
ところが昨年の高校選手権予選でついに3強時代が終わった。決勝は和歌山工対和歌山南陵。必ずしも強いチームではないが、とにかく3強以外でも自らの可能性を信じられる時代が来ることが肝要だ。高校生は自信のあるなしで大きく変わる。いわゆる「自信の無いマラドーナよりも自信のある並みのフットボーラーのほうがいい」というやつだ。

さてこの日和歌山県1部リーグに足を運んだのは3強がいないからである。あえて3強を外し、和歌山県の準トップクラスを観る、ということが目当てだった。元々私の観戦のベースは大阪府のカップ戦の大会序盤にある。だから関西でもっともレベルが落ちるとされる和歌山県でも1部リーグなら十分楽しめる。少なくともたまに和歌山県準々決勝レベルを楽しめるのだから、昨年の新宮高校のようなことがない限り楽しめるはずだ。

和歌山県1部リーグ
海南高校−和歌山工業高校
2月11日 13時 紀三井寺補助 晴

海南           和工
−−−−−十四−−−−− −−−四八−−六八−−−
−−−−−三十−−−−− −−−−−七五−−−−−
十番−八番−−十六−五番 誰々−二五−−三三−十四
五十−九番−−四九−二番 −−八八−九十−四七−−
−−−−−十二−−−−− −−−−−一番−−−−−

さて海南と和工は格としては同格で、新チームの力そのものも互角に見える。ただし自信を除く。和工はミスをしようが積極的で守備でも奪ってやるという気迫に溢れ、双方繋ぐチームながら、ミスしても和工のほうにボールが転がる。フットボールは積極的なチームに勝利が転がってくるものだ。全国に出たという自信はこれほどまでに大きいものか!海南は確かに上手いしレベルは高い。繋ぐテクニックもある。しかし守備でガツガツ当たらないし、奪いに行くというより恐る恐る寄せるという印象。持っても仕掛けないし、気迫で負けている。よくある「上手いんだけど何かが足りない」という状態だ。まあ自信というものは新チームになって積み上げていくものだから、海南もシーズンを通してこのままではないだろし、和工の自信も崩れる時が来るかもしれないが。12分、和工48番、右足アウトにかけたミドルが突き刺さる。0−1。以降48番がノッてしまい、海南は手を焼く。和工75番はレフティーで身体が強くキープからスルーパスを狙うエース。33番は積極的に前を向き、14番は快速で右を駆け上がる。90番も自信を持ち、上がり、ロングフィードも繰り出す。これに対し海南の1トップ14番は上手いのだが、シュートの積極性がないのと、そもそも1トップ適性があるのか疑問で、上手いゆえに適性の無い、要のポジションを任されている印象すら受ける。右サイドはタフにアップダウン。5番は突進力がある選手。左の10番は上手いと思うが、何せ守備に追われ持ち味を発揮できない。インサイドの8番と16番はプレッシャーに晒され、大胆さもなく、つまり自信を持ってほしいと思った。和工は75番も右コーナーからこぼれを右ポストかすめるシーンも。44分には和工鋭い低いパスを海南DFがクリアミス、再び48番が蹴り込む。0−2。海南はダイレクトパスが出始めた時間でシーズンにようやく入り込めたか?という印象を受けた時間帯だっただけに痛い。

さて、後半は海南が互角に持ち込む。やはり強い。しかしクロス精度が低いこともあってなかなかシュート撃てない。シュートの積極性もメンタルによる部分が大きいから。それでも1点追撃する。なお逆サイドでゴールが遠すぎて得点者を判別できなかった。一方和工は勢いに乗った48番がクロスの飛び出し右サイドネットに当てたり、25番が裏に飛び出し海南キーパーの鋭い飛び出しに防がれたりと相変わらずチャンスを作る。このゲームのパーソン・オブ・ザ・マッチは間違いなく48番だ。2得点というだけでなく、自信に溢れた和工の象徴となった。後半は互角だったが、結局1−2で和工が勝利した。

この1年両チームがどう積み上げていくかは分からないが、現時点では自信の差がまともに出てしまった。ただ自信というものは伝統から来る部分はあるが、1年間戦って積み上げるものでもある。またカップ戦では勢いに乗ってポンと壁を超えるものでもある。昨年の和工がまさにそんな印象だった。今後どうなるか?



和歌山県1部リーグ
粉河高校−和歌山南陵高校
2月11日 15時 紀三井寺補助 晴



粉河           南陵
−−−十一−−十番−−− −−−九番−−十七−−−
−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−
五番−六番−−八番−誰々 六番−十番−−八番−七番
三番−二番−−十三−四番 五番−八番−−十四−二一
−−−−−一番−−−−− −−−−−一番−−−−−

南陵の監督の羽畑さんは元G大阪の選手で和歌山南陵の前身の高校のサッカー部からガンバ大阪ユースに移籍し、トップ昇格しサテライトで得点王になった実績がある。長身センターフォワードだった。そして昨年の和歌山南陵も長身センターフォワード中心のチームだったが、今年はそういうチームではない。現役時代の自らのスタイルに固執するタイプの指導者ではなさそうだ。サイド攻撃を徹底する。これに対し粉河は丁寧に繋ぐカウンターが武器。横へ横へと空いている選手を使う。ロングボールは蹴らず、チーム全体がバランスを保ちつつ押し上げる。展開もないが、距離感のいいチーム。シンプルなパスが良くつながる。しかし23分、南陵右サイドバック21番、たぶん右利きだが、いきなり左足35メートルロングシュート、これが左上隅に突き刺さる。ドライブ回転かかっていたか?ギリギリに突き刺さったのはマグレかもしれないが、爆発的なキック力は本物だ。大柄ではないしよほど体幹強いのだろう。全体に身体能力では南陵に分があるが、圧巻のシュートだった。これに対し粉河は自重してた攻撃力が高さそうな両サイドバック4番・3番が上がってきて、8番が下がって組み立てる。8番は上手くてミスがない。というか8番がミスをしない前提でチームが組み立てられている。サイドを突きたい南陵だが、粉河がサイドで押し込み始める。そして8番が思い切って上がりはじめ、右を破り角度のないところから流し込み1−1に追いつく。8番の恐るべき冷静さだった。結局前半は1−1で終了。

体調が万全でないこと、15時キックオフで寒いことからハーフタイムで帰る。南陵としては長身センターフォワードがいれば楽だったのだろうが、そうでない以上フォワードがサイドに流れて受けたり、粉河サイドバックをけん制して上がりを封じたかった。粉河はミドルがあればフォワードも活きたが、なかなかフィニッシュまで行けなかった。とは言え和歌山県1部リーグとして問題ないレベルだった。




この日の目的、3強を除く和歌山県1部リーグのレベルの高さは確認できた。昨年の和工の活躍が刺激になっているのかな?高校生は自分の可能性を信じていれば一気に伸びるものだ。今年の和歌山県はなかなか楽しみだ。


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T.K. [MAIL]