月と散歩   )   
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2003年07月14日(月) 僕は走って灰になる。


足を動かすと、『ナントカ』っていうホルモンが出て脳を刺激する

…とかなんとか。

だから、考えが煮詰まった時や やる気が起きない時に
気分転換で散歩 ってのは科学的にも証明された手段らしい。


昔、どっかで仕入れた知識。

―――

ここ最近、なーんか おかしい。

僕自身もだけど、まわりの雰囲気、地元の友達、…世の中…は前からか。
お疲れムード。閉塞感。

負けてられるか!と右に立ち向かえば左の問題に ど突かれる。

そのうちやる気もどこへやら…


そんな『オリコウなオトナ』は御免被りたい。
…かといって、目の前の一番大きな問題は今すぐどうこう出来るもんでもなく。
すでにそれすら言い訳か。


堂々巡りの悪循環。

―――

それら、まとわりつくすべてが鬱陶しくなって

僕は 走り始めた。

―――

もともと長距離走は得意だった。


走りだけじゃなく、なんにでも僕は『長距離タイプ』だ。

ゆっくりと走り始めて、身体が暖まると少しずつペースをあげて…
でも最後のチカラは 最後まで取っておく。
んで、ラストスパート…!

傍からみると とても能率が悪いし、イヤラシイ走り方だと自分でも思う。

けど、あのラストスパートの気持ち良さは ゆずれない。


…やっぱり、イヤラシイ?(苦笑)

―――

一日目。

久しぶりのランニングシューズも、心なしか軽く感じる。
本格的に走るのは2年ぶりだ。


(行けるところまで、いってみよう)


近くを流れる小川の、終わりを目指した。

梅雨時の空気は重いくせに薄く、タバコでくすんだ僕の肺はなかなかうまく機能しない。

でも汗がひとつ落ちるたび、ココロが少し晴れる。

…。

川は途中で地下に潜ってしまい、追うことが出来なくなった。
結局、30分ほど走って 帰る。

Tシャツには、搾れるくらいの汗。

―――

二日目。

小雨がパラついているけど、むしろ心地よい。


恐れた筋肉痛はあまりなく、膝が少し重かったけど 柔軟を念入りにして走り始めた。

身体が慣れてきたのか、息も続くようになった。

昨日と同じコースで、タイムを5分ほど縮める。


ベストラップ(2回しか走ってないけど)と引き換えに
片方の膝を壊した。

そういえば、中学の頃 半月板やっちゃってたっけ…。

―――

三日目。

膝を守るため、サポーターを買いにいく。
なんかスポーツマンみたいだ、とひとり悦に浸る。


「走ってる」 と 同期に話すと

「どうした?悩み事?」 と返ってきた。

(こ、こいつエスパーか…?!)

でも全てをうまく説明する自信が無かったので
「健康のため」ということにしておく。

それで膝 壊してりゃあ世話ないや(笑)。

―――

四日目。

けっこうな、雨。

走りに行く、といったら同期が付き合ってくれた。

ふたりで雨の中、走る。
汗だか、雨だかなんだかわからない。

なんか、すげーや。
25歳にして未だ青春 出口見えず、って感じ?(苦笑)

―――


走るのは、逃げるためじゃない。

先へ、進むためだ。

走って 走って、純粋な白になる。


その先へ。


―――

ある日の仕事中。

コクピットへ入ろうとして、『痛くないほうの膝』を強打。
バランスよく両膝 痛める。


燃え尽きる日も、案外近いかも(苦笑)。


2003年07月12日(土) 『戦え!野良犬』



6月。

―――

やっと馴染んできた原籍の職場を、
『応援』というカタチでまた離れる。

とりあえず9月一杯の予定だけど
課長いわく、
「期間の延長もありえるから」

彼らが「ありえる」というときは、実はすでに『決定事項』なんだ。

僕ら現場に話が下りてくるときは、もう僕らではどうしようもなくなってから。

そういうふうで、組織ってのは円滑に動く。
5年いて、そう学んだ。

―――

新しい職場は、戦闘機の整備をするところ。

3年前、同じような状況で 似たような職場に応援に行っていたし
僕はもともとその関係の学校出身なので
『むしり取った衣笠』ってヤツだ(違う)。

扱うのは、『F-4 ファントム-II』って機体。

車に車検があるように、戦闘機にも3年に一度、定期点検がある。

ロケットは一発勝負だけど、飛行機は点検を受けて何十年も使う。
このファントムという機体も、初号機が飛んだのはもう30年ほど昔だそうな。
もちろん部品の交換や改修を受けてきているので、30年前そのままで飛んでいるわけじゃないけど。


定期修理で入ってきた機体を、バラして、清掃して、必要とあらば部品を交換して、組み立てて、色ぬって、機能を確認して送り出す。

そういう仕事です。

―――

初めての職場。
『応援者』という立場。
先への不安。
プライベートでの いろいろ。

そんなのが重なったのか、この頃から原因不明の下痢に悩まされる。

また。

眠れない夜。

―――

一週間を過ぎ、だいぶ仕事には慣れてきた。

僕の仕事は、組み立て直された機体にエンジンを載せて試験をして調整をすること。

ロケットがおよそ半年に1機のペースで造っていたのに対して、
戦闘機は2週間に1機のペースで機体が出て行く。

ロケットは機体の品質管理上、空調完備のなかでの作業だったけど
いまの工場は扇風機が数台あるだけ。
外での作業も多い。
それに加えて内容のほとんどが力仕事。

なかなか身体が慣れてくれず、一日終わればもうヘトヘト。
寮に帰って寝るだけ。


時間の流れが、おそろしく早い。

―――

やりたい事と、やらなきゃならない事。

それらを『ふるい』にかけて、最低限できることをなんとかこなす日々。
出来なかったことが、また重く圧し掛かる。

下痢、2週間目 突入。

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まるで入社当時に戻ったみたいな精神状態。

…いや。
ぐるっと廻ってもとの場所のようでも、それはきっと らせん階段の上と下。
登っているはずさ。

と、自分を奮い立たせたり、立たなかったり(苦笑)。

―――

気付けば6月も終わり。

僕がエンジンを積んだ機体は4機になっていた。


一度、血便(!)らしきモノを確認するも、それ以上悪くなることもなく
アレはきっと切れただけなんだ(どこが?)、と自分を納得させる。

…なんか、汚い話でスンマセン(苦笑)。


帰ってきてすぐに寝てしまう生活が板に付いてしまい、
3度の食事が1度に減る。
こりゃ、不健康はロッカーの基本 なんて言ってる場合じゃあないナ。

―――


  キミは戦えと アタシに言うけど


―――


夏が、すぐそこで足踏みをしている。



                               『戦え!野良犬』 by アナム&マキ


2003年07月06日(日) やわらかな死と再生と、あと なんか。


やあ。
サボりもサボったり、二ヶ月と二週間。

スンマセン。


…さて。

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5月。

―――

ツクバの出張から戻った僕を待っていたのは、『定時地獄』だった。

…『地獄』だなんて。
いそがしい人が聞けば羨む話。毎日、定時であがっていい なんて。
僕もそうだった。

…最初は。

お金の話はヤラシイからしたくないけど、
…僕は仲間内では『むっつり』で通ってるんで、ま、いっか(ヤラシイ違い)…
僕のお給金は残業代で保たれていると言っても過言ではなく。

つまり、最初のうちは わーい定時だー、なんて はしゃいでいたのが
一週間もするうち、のっぴきならない現実ってやつに気付いたのだ。

そして、『現実』は一枚の紙に姿を変えて僕の前に現れるのだけど。

それはもうちょっとあとの話。

―――

あ。

二ヶ月分、まとめて書くんで 長いっスよ?(苦笑)

―――

毎日定時で帰るどころか、「休んでくれ」なんて頼まれる始末。
当然、ゴールデンウィークもフル+α で いただきました。

―――

田舎に帰る。

―――

この春、めでたく3度目の就職をした仲間が
ちょうど研修終わって配属先へ赴任する準備をしていたので、手伝うことにした。

お引越し。

「ほとんど準備できてないんだ」という言葉どおりの部屋を、
3人がかり3日間で なんとかまとめる。
その間、そこに二連泊(苦笑)。


僕も彼も、『モノ』に対する執着がどこか似ている。

そのせいか、部屋の汚れ方も なんか似てる。
ベッドの隙間から迷子の靴下が出てきたり。
冷蔵庫から賞味期限の切れた缶ジュース(未開封。限定モノ)が出てきたり。
他人がみるとどうでもいいようなものを大切に残してたり。
誰が見ても大事なものが、無造作に置かれていたり。
でも雑然としてるようで、本人にはわかってる。


そんなんで、自分の部屋の掃除となると からっきしな僕だけど
不思議と他人の部屋だと はかどる。

…そうか!
僕は他人のモノなら容赦なく扱えるのか。

…いやいや。んなことはないですよ(汗)。
ちゃんと丁寧に梱包しましたとも。いや、ホント。

とにもかくにも、しだいに部屋が整然と片付いていく様は見てるだけでも気持ちがいい。

でも、片付く前の部屋のほうが落ち着いたのはなぜでしょう(苦笑)。

―――

ばたばたと3日間が過ぎ、彼は最果ての任地へと旅立っていった。

頑張れ、とは言えた立場じゃないけど
歩けば見える風景も変わる。
その先は、少なくとも今よりはマシな眺めさ。
一日一歩。
三歩進んで ニッと笑おう。

…そこでまた会おう。同志。

―――

…あ。
田舎帰って、引越しの手伝いしかしてないや…(苦笑)。

―――

名古屋。

帰ると、寮のネコ(野良が住み着いてる)が増えていた。

仔猫。


春が終わる。


―――

連休が明けても、相変わらず仕事はヒマ。
やることは まあそこそこあるんだけど、人を動かす『お金』がないのだそうだ。
いままでで使い過ぎたツケが廻ってきたのだ。

なにか作業をすると『お金』が発生するから、なにもしてくれるな…とは。

まさに、飼い殺し。

―――

毎日パソコンの前に座り、時間が過ぎるのを ぼう と待つ。

まるで、定年間近のおじいちゃんのようだ。

―――

この頃、浮かんでは消え していた転職の考えが
次の段階へ入る。

―――

ある日、寮に帰ると駐車場の隅から声が聞こえた。
辿っていくと目が開いて間もないような仔猫が二匹、にぃにぃと鳴いていた。

うわわあぁぁ…!(喜)

思わず抱き上げたくなったけど、ちょっと離れたところから親猫が心配そうに見ている。

…そんなに大切なら、逃げないで牙剥いてくるくらいの心意気みせろよ…!

無警戒に足元へすり寄ってくる仔猫の脆さに、ちょっと切なくなる。
アタマを ぽんぽんと撫でて部屋に退散。

…。

デジカメ持って戻ったら、もういなかった。

ちぃ。

―――

仕事。
ヒマさ加減が、佳境を迎える(笑)。

他課への応援の話が持ち上がる。
要は、忙しくしているところへの『出稼ぎ』だ。
当然のように、僕の名前も挙がる。

課長から
「いろいろあるけど、武者修行と思って 頑張って」
と、激励を受ける。

なんじゃ、そりゃ。

―――

未知なる『次の一歩』も魅力的だけど、もうそろそろ『安定』なんてのも悪くない。
そう思い始めた矢先だった。

…跳ぶなら、いまか…。

ちょうどよく、愛想も尽き果てた。

―――

六月から、
僕は戦闘機の整備に移ることになった。



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