月と散歩   )   
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2003年04月22日(火) ツクババリバリ伝説 10

『郷愁』


筑波宇宙センターを出て、高速を南へ バスは行く。

東京まで1時間。


広い空の大きな大地で育った僕には(苦笑)、
超高層のビル
その間を縫う近代的交通機関
スローモーションのジャンボジェットが飛び交って
…なんだかSF映画を観ているようだ。



速い、はやい。



駆け足で過ぎて行く
人や
時間や
風景や。

まるでホントに、映画の観客になったよう。


逃げるように、名古屋へ2時間。



さよなら

ただいま

こんにちは。



一度逃げたら、癖になるよ。


2003年04月21日(月) ツクババリバリ伝説 9

『ツクバライフ』


自転車でこんなに走り回ったのは学生のとき以来。


旅館で貸してくれた自転車は、本当にひどいものだった。

最初に貸してくれたのは、カギを開けることが出来なくてすぐに替えてもらった。
次にあてがわれたのは、チェーンが だるだるで少しの段差を越えただけでよく外れた。
けっきょく最後までそいつにお世話になったけど、職場の行き帰りに油で手が真っ黒になったことは数知れず(苦笑)。
ちょっと調整してやりゃあ済む話なんだけど、
なんだかんだで最後までそのままだった。

手のかかる子ほどかわいい、の心理である(めんどくさがり?)。

―――

この街は、だだっ広い敷地を持つ研究施設があちこちにある。
『学園都市』なんて言うけど、僕の行動範囲でけっきょく学校はひとつも見なかった。
おおきな通りに沿って走ると、500mおきくらいに『ナントカ研究所』の看板。

とにかく、広い。

でもそれがなんだか嬉しくて、『愛車』に跨りめちゃくちゃに走り回った。

学生時代を過ごした環境にちょっと似ていたからかも知れない。

―――

北海道、千歳市。

…の、中心部から離れること10数km。
そこは工業団地とは名ばかりで。
学校の周りにはバブルのあおりを受けてか、建つ見通しのない『建設予定地』の看板。

学校まで、100m。
一番近いコンビニまで、3km。
冬にはなかなか除雪が入らず、陸の孤島になるのもよくあることだった。
歩いてコンビニ行ったヤツが吹雪に遭って遭難しかけたこともあった(笑)。
その時期、寮生の朝は学校までの除雪から始まった…なんて話はまた別の機会に。


とにかくそんな所、クルマがなけりゃやってられない。
けど、カネもない。

唯一の移動手段が、21段変則の折畳み自転車だった。

近所はもちろん、
泣きたくなるくらい離れた駅までとか
さらに離れた街までとか。

電車賃をケチって札幌まで行ったこともあった。
さすがに1回で懲りたけど(苦笑)。


でも僕は、自転車からみる街が大好きだった。

―――

ここツクバに来て、ひさしぶりにそんなことを思い出した。

ついついクルマに頼りがちなこの頃だけど、たまには自転車もいいなー。


でもそんなツクバの生活も明日で終わり。
当初23日までの予定だった出張が、仕事が早く済んでしまったため1日短くなった。

嬉しいんだけど、ちょっと残念。

―――

大きい割に、街灯の極端に少ない道。

街路樹の根が張り出して、でこぼこだらけの歩道。

桜の花びらで埋まった側溝。


低めのサドルから見るそんな風景ひとつひとつが好きだった。


春の風は、まだちょっと冷たいけど。


2003年04月20日(日) ツクババリバリ伝説 8

『以心伝心…?』


作業が順調に進んでいるため、今日は休み。


気分のウラを映したような、低い雲。霧雨。
負けるもんかと、目を開ける。

…朝。
起きたらもう、昼だった(苦笑)。

―――

ちょっと離れたとこに映画館がある。
ひとりの時間を、そこに預けることにした。

昨日が封切りだった『ドリームキャッチャー』がちょうどいい時間にあった。

コーラとキャラメルポップコーンを買って席につく。

ひとりの映画。
キライじゃない。

―――

ネタバレにならないようにやんわりと内容を言うと…。

少年時代に『ある秘密』を共有し超自然的なチカラを手に入れた4人の、20年後に遭遇する驚愕の真実…!
って感じ。

実はそのチカラってのはテレパシーなんだけど(バラしてるし)。
相手の考えてることが直接伝わってくる、みたいな。

んで、物語もいよいよ佳境。
いろんな意味でビックリするような事実。真実。

原作がスティーブン=キングなんで、ちょっとホラー。
「ああ、なんかあるぞ。なんかあるぞ…。…ほら来た!」
なんて。
たぶん、観てる人みんながそんな気持ちだったんだろう。
だって僕の『心の声』以外にも、聴こえたから。



…え…?



一瞬、映画に感情移入するあまり、僕までテレパスになったかと錯覚するくらい(笑)その『声』は鮮明に聴こえた。

『声』をたぐっていくと、それはふたつ隣の席に腰掛けた中年夫婦の声帯からはっきりと出されていた(苦笑)。

「いやー、コワイわー」

「ははは…」

「ああ、そうか。そういうことだったんだ…」

…なんて、感じたことが一瞬あとに音声となって伝わってくる。
中高年、おそるべし である。


でも、キライじゃない。
ああ、映画館で観てるんだなー、って。


おかげでテレパス気分も味わえたし(笑)。


2003年04月19日(土) ツクババリバリ伝説 7

『バリバリ。』と『その後。』


4月16日。
JEMのコンテナ積み作業。

モノが大きいだけに、多少てこずることはわかっていた。

しかし。

…しかしまさか、日付けが変わりそうになってようやく
「とりあえず、今日はここまでにしとこっか」
なんて、誰が予想できたか…。


アメリカ、フロリダ州のケネディ宇宙センターまでは船での輸送となる。
途中、どんな嵐(アクシデント)に遭遇するともわからないので、機体の固定には万全を期す。
コンテナの中で機体が遊ばないようにするには、固定治具との隙間をできるだけ少なくすればいいわけで、でもそうすると当然、積むのが困難になる。


…作業が遅れた理由を書類で提出しなきゃならないなら、模範解答はそんな感じ。


けど、すべての『事実』には『ウラ』がある。


今回の『ウラ』は、こんなんです。

…ないしょだけど、いまの作業クルーはチームとしていうなら最低、である。
個々の能力は高いけど、チームワークがぜんぜんなってない。
個人作業ならともかく、今回のような共同作業になると もうバラバラ。
かく言う僕も、チームプレーは苦手なほうなので大きな口は叩けませんが(汗)。

ろくに舵を取れない新任リーダー。
もどかしさのあまり、すぐに指揮をとりたがる古株。
そんな『船頭』がたくさんいる状態で、『船』がまっすぐ進むわけがない。
みんな、フラストレーションばかり溜まって。

それでも作業としてはなんとか完了と言えるまで持っていったのは、さすがオトナですねー。


24時ちょっと前に職場を出て、遅い夕飯とって部屋に戻ればもう2時だった…。


まあ、たまにはバリバリ仕事もしてるんスよ、って話(苦笑)。

―――

その次の日は、後片付けくらいだったので定時で終わり。
その後、ご苦労さん会ってことで 飲む。

実はこの日の作業中、僕は作業台の角に頭をぶつけてしまい、おでこに大きなコブをこしらえた。

でもまあ、酒はなんとかの長。
とりあえず飲んどけー。

ということで(?)、吐くまで飲む(弱いのに)。

…アレ?
なんか熱い…てか、痛っ…!

コブは順調に成長を遂げ、額からは再び血がにじみ…。

…ああ。『百薬』つっても、切り傷・打ち身みには効かないのなー。酒(苦笑)。

―――

機体が出て行ってさっぱりした作業場。
あとは、別送品の整理と片付けの日々。

んで、今日は土曜日だし…ってことで3時あがり。

夜。
後輩二人と居酒屋で飲む。
なんか飲んでばっかり(苦笑)。

いつもの通り、チューハイ半分で出来上がって…。

普段、そんな場では絶対にしない、仕事の話でアツくなる。

…後輩と言ったって、出張や他課への応援が多くて情熱にも欠けた僕は
能力的にはもうとっくにこの二人に追い越されている。

二人もそれはわかっていて、でもだから同じ高さで話が出来た。

…ダメじゃないか…?

―――

二人の思っていることを聞いて

「もう、あとは安心(僕がいなくても)」

なんて一人前のフリしてる僕は、やっぱり…。


2003年04月15日(火) ツクババリバリ伝説 6

『旅立つ君に、花束を』


タイトルの『ツクババリバリ伝説』は、明和電気の同名の楽曲から勝手に拝借してんだけど。

―――

…いうほど、『バリバリ』も仕事してないかも…と思った、午後の葉桜(苦笑)。

―――

いま、筑波宇宙センターではJEM(国際宇宙ステーション、日本担当部分)の出荷準備が着々と、しかしわりとのんびりと進んでいる。

明日は機体がコンテナに入れられ、あとは出荷を待つだけとなる。

そんなに深く関わったわけではないが、やはり出荷となるとそれなりに感慨深い。
あまり表には出ないJEMだけど、実はかなりの年月をかけた国家的大プロジェクトなのだ(そうだ)。

僕が初めてJEMに関わったのは5年前。
入社してすぐ、いまとさほど変わらない状況(「工数が少ないからヨソへ応援に行って」という上からの強い要望)で、JEMの組立作業にまわされた。
そのときは
「ホントにこんなんで人間乗っけて宇宙に浮かんでいられるのか」
と思ったもんだけど、
それがいま、いよいよ『旅立』とうとしている。

―――

でも、ホントに大丈夫なのか?という疑念は未だに拭えない。

『スペース・デブリ』という言葉がある。
宇宙を漂う、大小さまざまな『ゴミ』のこと。
隕石だったり、ロケットの部品だったり、使命を全うした衛星のカケラだったり。
それらが音速の100倍近いスピードで飛び交っている。
ヘタなミサイルより強力な破壊力を持つ。
スペースシャトルや現役の人工衛星がそれらにぶつかる確率は、宝くじの1等に当選するより低い。

…けど『ゼロ』ではない。

宇宙ステーションくらいの規模になると、その確率も高くなる。

まあ、ある程度の大きさのデブリは地上で監視してるので避けることができるのだそうだ。
でも、『ある程度』以下のデブリは発見が難しい。

なので、当たっても(多少は)大丈夫な装甲が施されている。

44マグナムで至近距離から撃っても、穴は開かないらしい。

…ホンマかいな?

そう思ってしまうほど、JEMの装甲は頼りない。
まあ、僕なんか及びもしないほど頭のいい人たちが考えたものなので
そんな心配はまさに『シロウト考え』なのだろう。

―――

でも。

厚さ数ミリのアルミ合金と断熱材の向こうは、真空で満ちた(?)危険な海。

頼まれても、僕は乗りたくないや(頼まんて)。


2003年04月14日(月) ツクババリバリ伝説 5

『Laundry』

旅の荷物をできるだけ少なくしようと思った僕は
実は3日分の着替えしか持ってきていない。

で、今泊まっている旅館は『素泊まり』なので
食事はもちろん出ないし、洗濯も自分でしなければならない。


ってことなので、
僕は、3日ごとに近くのコインランドリーまで通うことになる。

―――

例えば
夕暮れの河辺に佇み、流れる水を見て なんか、ほっとする。

若葉の草原に身を沈めて、往く雲に思いを馳せる。

ココロの癒し方は人それぞれ。


僕は、廻る洗濯物を眺めることでココロが癒されるのに気がついた(笑)。


洗濯物が綺麗になる、30分間。
膝の上、開いた雑誌を見るでもなく、
ただぼうとドラム式洗濯機が働くのを眺めて過ごす。

ハタから見れば、ちょっとヤバイかも(苦笑)。

―――

土日の休みで洗濯を怠けてしまい
ついに着替えのストックが底をついた。

なので、いま、僕がジャージの下になにも穿いてないってのは
絶対に秘密 なのであり…。


2003年04月11日(金) ツクババリバリ伝説 4

『舞い散る花は、雪のよう』


あいかわらず、今年も花粉症です。

___


今日はJEMが、プレス発表の日。

もう昨日の時点で、機体に関しては出荷準備はほとんど終わっていたので
今日は機体の清掃と、その他の発送品の整理。

午後からプレスの人たちが来るっていうのと、もうやること無くなったんで
2時ちょっとで帰りになった。

せっかくインタビューされてもいいよう、原稿 考えていたのにぃ(笑)。

___


地元、北海道の友達からメール。

「こっちももうだいぶあったかくなってきました」


ツクバの桜は、もう散りはじめている。

___


ホントは今日名古屋へ移動する日なんだけど、日曜日にまた戻らなきゃならないし
ってことで、土日は帰らずにこっちで過ごすことにした。

明日は、東京デート。

ハチ公前で待ち合わせて
お台場でフジテレビのでっかい『球』見て
東京タワー登って…。

…って、田舎モン?(笑)


2003年04月10日(木) ツクババリバリ伝説 3

『20XX年、宇宙の旅』


なんだかSFみたいな話だけど、宇宙ステーションはもう造られている。

いま現在はロシアとアメリカの機体がいくつか繋がっているだけだけど
この先、ヨーロッパやカナダなど世界各国がパーツを打ち上げて
くっつけて、大規模な『宇宙港』が完成する。

さまざまな事情により遅れ気味だけど、計画は一歩一歩進んでる。


僕らが小さい頃思い描いた『未来』は、もうすぐそこまで近づいているんだ。

すげーや。

___


その国際宇宙ステーションで、日本は実験区域の製造を担当している。

それがいま筑波宇宙センターにある、JEM〜通称『きぼう』ってヤツ。
これからアメリカへ送られて、スペースシャトルで打ち上げられる。
こないだの事故で多少遅れてはいるけど、思ったほどの影響はないようだ。


んで、僕らは何をしてるかっていうと、出荷前の最終点検と出荷の準備。
…の、手伝い。

名古屋の工場にあったときにちょっと触ったくらいだから、出来ることっていってもたかが知れてるもんで。

___


いままではロケットを主にやってきたので、いろんな点で勝手が違う。

一番の大きな違いは、無人か 有人か ということ。

ロケットは『荷物』を運ぶだけの使い捨て。
一発勝負なので、欠陥は許されない。
…でも逆に言えば、打ち上げたらもう戻ってくることはないので
少々の融通が利く(ないしょ)。


対してJEMは 軌道に投入されてから先、10年は使い続ける。
失敗が許されないのはもちろん、中に人が乗るってことまで考えないといけないから ものすごーく気を遣う。

…いや。ロケットだって妥協のない完璧な製品を送り出してますよ。いやホント(汗)。

___


やはり自分の命を預ける機体。
気になるのでしょう。
宇宙飛行士のひとたちが、たまに作業や機体を見に来ます。

今日なんて会話をしてしまいました。


「あのー、ハッチ閉めの作業って何時頃からやりますかねー?」

あ…えと…アレやってコレやってからだから…たぶん、3時頃っスかねー。

「そうですか、じゃ、またその頃…」


NASDAの監督員かと思ってたら、あとから聞くとその人、宇宙飛行士だった。
だって、フツーなんだもん(当たり前)。


かと思えば。


女性宇宙飛行士の角野サン。
とてもきれいだ、とか
子育てしながらだから大変だろうに、とか
でもお子さんがいるようには見えないですよね(失礼?)、とかとか
お噂は兼ねがね伺っておりました。
…僕らの会話のレベルがわかってしまいますが…(苦笑)。

その角野サンも今日、機体を見に来た。

現場に入るにはエアシャワーを浴びて、体のゴミを落とさなきゃならないんだけど。
僕が入ろうとしたとき、角野サンが出てきた。
以下、そのときの会話。


あ…。どうぞ!(お先に)

(出てきて)「すみません、ありがとうございます」

いえ!…あ…お、おつかれさまです!!

「あ、どうも…」


すげー。宇宙飛行士に道、ゆずっちゃった…!(笑)


…会話、か?

___


こっちに長いこといる人の話だと、たまに宇宙飛行士の人と酒を呑みにいくこともあるらしい。

考えてみれば、すごい職場だ…(笑)。


2003年04月08日(火) ツクババリバリ伝説 2

『キノコの逆襲』


茨城県つくば市。

宇宙開発事業団(NASDA)本社。
そこでは宇宙ステーションの一部(JEM〜通称『きぼう』)の出荷準備が着々と進んでいる。

僕らはそれのお手伝い。

おお。なんか、かっけー(笑)。

―――

まあ、それがどんなもんなのか、ってのはまた今度(ネタが無くなったときに)書くとして(苦笑)。

―――

僕の泊まっている宿は、職場まで自転車(宿で借りた)で10分ちょい。

…それはいいんだけど…。

最初案内された部屋は、風呂とトイレが共同。
まあ、それもいい。一週間したら替えてくれるっていうし。

でも。

ドアの部屋番号。
その下に書いてあるのは何すか?

…。
『きくらげ』って…(苦笑)。

なに? ここは『きくらげの間』?


見ると他の部屋にも書いてある。

101号室…『まつたけ』

102号室…『しいたけ』

103号室…『なめこ』

…。

……なぜ、キノコ? なぜに『なめこ』?? あまたのキノコの中からなぜ『きくらげ』を??

―――

夜。

コインランドリーの帰り。

ふと旅館の外壁をみると、そこにはひっそりと
しかし大きくリアルに描かれたキノコの絵が…!

―――

謎は深まるばかり…(苦笑)。


2003年04月07日(月) ツクババリバリ伝説 1

『ツクバの風に吹かれて』


旅に出るのは簡単だ。

お気に入りのTシャツと履き慣れたスニーカー。
読みかけの本と、何枚かのCDをバッグに詰めて。

あとは、一組の脚があればいい。


―――


計らずも(?)金土日と久しぶりの連休をいただいてしまった僕は、
これまた久しぶりによく動いた。


しばらく見てみぬ振りしてた愛車を労わった。
オイルを替えた。
切れてたライトも交換した。
一年振り(!)くらいに車内を掃除した。
シートまで除菌消臭。
一年半振り(!!)くらいにワックスでも掛けてやろうか、と思ったところで
雨が降ってきたので 労い、終了(笑)。


見違えたように(車内のみ)キレイになったクルマでドライブ。
咲き誇る桜。
助手席の笑顔。
おお。サンルーフの夜空も透き通ってる。


部屋。
かれこれ3年前から片付け途中だった僕の部屋。
開かずの『魔窟』だった押入れ。
埃をかぶって ふてくされたパソコンの眠る、もいっこの押入れ。

全部、ひっくりかえして大掃除(大げさ?)。
パソコンも、もっと使い勝手のいい位置にお引越し。
おかげで朝までかかってしまったけど、なんだ、やればできるじゃないか。僕。


…寝てない…。


―――


昔から、『旅』が好きだった。
旅行じゃあなく、『旅』。

ひとり旅。
べつに遠出しなくたって、気持ちがあれば近所の散歩も『旅』になる。

度重なる出張のおかげで旅慣れてもきた。

でもだからといって、旅上手か といえばそうでもない。
むしろ、下手。

いつも荷物が多くなる。
そう必要で無いものも、ひょっとしたら…とカバンに詰める。
結果、僕の荷物はいつも大きくて重くなる。


で。

今回は、できるだけ荷物を少なくしようと試みた。

…んー。
この本、まだぜんぜん読んでなかったなー。よし。採用。
この本はよっぽど気が乗らないと読まないだろうから、却下。
これ、読みかけだけどなー…。気分じゃない。却下。
あ。この本、こんなとこにあったんだ。うん。採用。
…待てよ?さっきの読みかけ、ひょっとしたら読みたくなるかも。そんな予感が…。…採用。

CD。
ツクバだし、「明和電気」は外せないな。
あと、やっぱテクノ、かな。ツクバだし。
「斎藤和義」のニューアルバムは毎晩聴くから…。
ああ。絵を描くから(?)「くるり」も入れとこう。
…たまには「ビートルズ」か…?

あとは…
お泊りセットにお手紙セット、カメラにスケッチブック、えんぴつと…着替えは3日分あればいいか。
…! 作業着、忘れてた。

ん。

こんなもんか。


…。

…あれ?

お、重い…(汗)。


―――

旅に出るのは 簡単だ。

ただ、それと『旅を続ける』ってのは、また別のはなし。


2003年04月06日(日) 四月の空は、うわのソラ


4月1日。火曜日。

僕は種子島から帰ってきた。

行ったり来たり、慌ただしくて
よく考えれば今年はまだ名古屋に一ヶ月ちょっとしか居ないことになる。

でもまあ、無事打ち上げも終わったことだし
これでしばらくは落ち着けるでしょう…。

…そう思った僕は、まだまだ甘かった…。

―――

4月2日。水曜日。

久しぶり、名古屋の工場に顔を出す。

出張帰りは、午前中に清算書を書き上げて昼から半休で帰る、ってのが慣例になっている。
だって、中途半端に昼から作業に入っても やっぱり中途半端だから…(言い訳)。

さて、そろそろ帰りますか…。

と。

作業長に呼び止められた。

なんでしょう?

「来週から、『ツクバ』行ってもらうから。23日まで。」

…。
マジすか?!

いや。うすうすイヤな予感はしてたんだけど。


『ツクバ』というのは、茨城県つくば市にある宇宙開発事業団(NASDA)の事。
そこではいま、国際宇宙ステーション(ISS)の日本担当部分が出荷前の最終機能試験が行われている。
僕らの仕事は、試験が終わったその機体の、出荷準備。

…というのはほとんどタテマエで(苦笑)、どうやらいま工場には必要以上の作業員を抱えておくお金がないらしい。

ふう。

―――

そんな衝撃の宣告を受けた僕は、翌日 出社してすぐ休暇届を出した。


…やってられっかー!!


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