快賊日記「funnyface」

2003年03月31日(月) 泡沫(うたかた)

最近ずいぶん暖かくなって来ました。
ようやくちょっと遅い春をこの国は迎え、
国花の桜もそれは美しくあでやかに花開き始めました。
満開の木の下は香り際立ち、見上げる空はピンク色。
春は穏やかに穏やかに過ぎて行くもの。
出来るなら遠い空のあの人達にも穏やかに過ぎて欲しい。
毎日報道されるそれにいつしか慣れて行く。
かの地の痛みはいっそ増すばかりなのに。
今日もまた義勇軍兵士が4千人…市民犠牲者が50人。
それは物の数ではなくて人の命の数。
桜の花びらが風に飛ばされ大地に落ちるように。
その姿はなお可愛らしく人々を喜ばすけど。
肉体は土へ、ならば無理に引き裂かれた魂はどこへ
還る事が出来るのだろう?
誰だって命は尽きる。どんな理由であれいつかはこの世を去る。
それでも命は繋がっている。この世の果てがもしあるなら、
きっとその日その時まで命は繋がってるんだ。
それは神秘。この世に神秘を紡いで生き物は呼吸を繰り返す。
それを奪っては生きて行けない。奪い続けて生きては行けないはず。
数を数える事に何の意味もない。ただ一日も早く笑顔が戻るように。
楽しみ喜びを奪い変わりに悲しみ痛みを与えるような事が、
一日でも早く終わるように。そうして世界中に桜が咲くように。
満開の桜でピンク色の春が早く訪れるように。
そんな祈りも知らずに、今年も桜は誇らしげに咲いている。



2003年03月21日(金) フライング

灯油が上がったらしい。
真冬じゃなくて本当よかった。
でももう少し寒い日が続くらしいから、やっぱりちょっと
困ったもんだ。それからもちろんガソリンも。
これは季節関係ないから痛いね。これから後どのくらい
上がって行くんだろう。ニュースで言った通り先ず最初に
日本の経済から…そう先ず。先ずとは先にと書く。
そう何より先に。また血が流れるとか最終手段というには
早いだろうとか小さい個人の声はやっぱり聞こえないんだとか
その前に先ず、日本の経済は…。
だってしょうがない、それは。確かに困るもの。
まだまだ景気は下を向きっぱなしで、なお下がるこの状況。
日本は遠い空の下で人々が生きてる訳で、
戦死より餓死の方が数倍怖い訳で。
知らない土地の知らない誰かの命の危機より自分の家の
来月の家賃の方が遙かに深刻な訳で。
それでも何も出来ない自分に歯ぎしりを覚える。
テレビで流れる映像に瞬間気が遠くなる。
あれは映画じゃなくて本当の事。暗闇を染める火花に息をのむ。
ああ、どうしようもなくやりきれなくて…埒もあかない事ばかり
浮かんでは消え、それでも普通の生活をしてる自分を呪う。
こんなに寒いのはなぜだろう。暖かくなるはずのこの季節
風が冷たく空気が重いのはなぜだろう。
世界中でデモが行われその映像が流れる中、我が国はテーマパークの
手荷物検査の映像が流れた。幾分寒さが引いた気がした。
それは自嘲か安堵か。こんなに重い気持ちをいくら引きずり
知った風な事を言ってみたり、混乱した頭を整理すべく言葉を
並べてみても何の事はない。そう、戦争は始まったんだ。
それも急ぎ足で始まった。この国の首相の下へは開戦10分前に
その知らせが。遅れること何時間…やっと知った自分は確かに
小さな存在で。ようやく事態を飲み込めた時には感情の一部が
欠落していた。…今年のさくらは少し遅いようだ…。



2003年03月17日(月) 旋回

人間というのは、どうも区切りをつけたがるクセがあるようで。
学生の頃はもう卒業の年とかもう高校生って簡単に
区切りがつけたのに、じゃぁ今はどこでどうつけたら
いいんだろう?そう考えて浮かぶのが季節。もう春です。
春といえば草木が芽吹く気持ちのいい季節。そしてお別れの
季節だとか。なんとなく自然達と一緒で新しい事の始まりばかりが
頭にあったけど、卒業や何かで別れもまた春に多いんだなと
ふと思い出しました。そういえば故郷を後にしたのも当然の如く春。
桜が満開に咲いて、そして最後の花が散る頃には東京にいました。
確かにお別れの季節なのかもしれません。日本は春に区切る国だから。
まだ少し感傷的になってる自分がいるのか。切なさが胸に忍び込んで来る。
今日会って明日別れてしまう人もいる。昨日会った人が同じ夢を
永遠に追い掛けるようになる事もある。そう、同じ船に乗って。
それはやっぱり奇跡みたいで嬉しい。ありがとうと言えば礼を言うのは
まだ早いと笑われ、ごめんと頭を下げれば、目の先が違うと鼻先を
かすめるように差し出された指先は上にピンと伸びている。
ほんの少しこの時の流れに乗っただけ。別に感傷的になってる訳じゃない。
まだまだこれからだし外は春。暖かくなり始めた風に、何を憂う事がある。
これからまだまだ楽しい事ばかり。だからこんな気持ちは本当は嘘で。
きっとその言葉を聞きたい…否、言わせたかっただけなんだ。
確信的に笑えば当然という笑みが帰って来る。季節は巡る。
うちらの世界も回って巡って行く。明日ある出会いが最高ならそれでいい。



2003年03月12日(水) さすらい

久しぶりに帰って来ました。
いつも舞台明けは更新がとっても滞ります。
余韻に浸ってるって訳でもないはずなんですが…。
疲れたってのもちょっと違う。確かに疲れてはいますが。
でもやっぱり余韻に浸ってるって方が近いかな?
気持ちが、気を抜くとそっちの方へ帰りたがってしまって。
現実社会に適応出来ない自分がいて、ダメだなって思ったり。
本番中の事をよく思い出します。稽古中の事はほんのりと。
やっぱり本番中が多いです。でも本番中っていっても演じてる
時よりも、その日の朝の事とか楽屋で話してた事とか。
そういう方がより多く思い出されたりします。
初日は、いつもとても特別で。緊張と興奮をかかえながら
劇場までのんびり歩く。知らない店からいつかの曲が流れてく。
あぁ、あの芝居はこうだったなって過去の記憶にちょっと
切なくなって。そう思いながら空を見上げれば文句なしの
青空が広がって。今日は天気予報じゃ雨だったはず。
天まで見方につけたらこりゃ凄い航海が出来そうだなんて、
ちょっとした感傷を自分自身で足蹴にする。
でもそんなのもわりと気持ちがいいもの。
感傷に浸ってる場合じゃないけど、それも悪くない。
あの頃があるから今があるんだ。もうずいぶんと遠くまで
来たような気がするけど、先はまだ長くて。
そんな考えにやっぱりまた切なくなって嬉しくなる。
記憶というのは勝手なもので、どうしたって心を切なくする。
楽しくて仕方なかっただけの思い出なのに。
過去は変わらないし戻ることがないから、そう思うのか。
そして振りかえれば懐かしくて大切だから歩き出せるのか。
初日の朝はそんな風に心を賑やかにしてくれる。
そうして僕らの航海は幕を開けた。力一杯の笑顔と共に。
そして同じように幕を閉じた。今はもう一番近い、遠い過去。
早速胸を切なく揺さぶるあの日々は、いつかの未来へと繋がってるはず。


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