Distortion


--家--


甘い匂いは優しく

小さな古びた門がゆっくり

私を受け入れ

一つの心のゆとりを作る


この地はとても汚れてしまったけれど

私の目には素晴らしく美しい世界

一人でも誇っていられるような

大きく力強い薔薇とともに



2003年05月28日(水)



--希望--


私の完全な姿は

きっと不完全で脆くて

あなたが触れれば壊れてしまうだろう

風さえ私を脅かすことが出来て

ここから歩き出せなくなる


私を待つ美しい嘘や

今にも襲ってきそうな獣に

手を伸ばすことも出来ない

ここから眺めるだけ


目を閉じて全てを受け入れれば

少しずつ鎧の重さにもなれる

未完成の私でも生きて行ける

このままここから動かなくても




2003年05月27日(火)



--灯火--


頭のなかで時間が音を立てて消えていく

わたしからいくつかの炎を奪って

もう 二度と持つことは出来ない


もしも世界が灰色だったとしても

自分がここに居るかぎり

充分生きていくことが出来ただろう

私は全てを浪費し続け 振り返って悲しむの

帰っては来ないと


頭の中で時間が音を立てて消えていく

悲しみの数は過ぎた日の数

歯車は死ぬまで止まらずに

その最後を見る事はなくて

言葉に代えるのが難しい

モノはすべて無ければいいんだ

そんな甘い果実は食べられない


2003年05月24日(土)



--still--


混ざる息 白い空

もういつのまにか忘れてた


空回るその音をずっと抱きしめたかった

いつか手放さないといけない時が来ると気付いてた

糸が少しずつほどけていたから


少しでも大きな力になればいいと

あまりにも力の無い言葉で放った

私の思いは伝わることもしなかった


大きな輝きが側に居ると

あの時の空は涙を流した

私はくすんだ石のように

それでも少しは大きい力をもてるはずだと

精一杯背伸びをしながら

あのときの息も空も

昔のことだとしても忘れずに

これから先も

もしもまたもう一度繋がっても




2003年05月21日(水)



--死のにおい--


器にはすぐ気付く

満たされた思いに気付くのは失った後

昔の事のように蘇る


私と過ごす時間はそう長くないんでしょう?

花が散ればその跡は淋しい

思いが溢れて

空白が私の心をさらうの


置いていかれるまで

まだ時間はある


もし死んだらそのさきには何が

私を助けてくれる人はいるの?



2003年05月20日(火)



--あなた。--


星が見えない雲ひとつ無い空は

私が生きる時間


あなたなんていない

私は独り

心に生まれた芽はもう摘み取った


その力は大きすぎて

私にはもう近寄れない

遠い人だから





2003年05月16日(金)



--季節の色--


少し距離が近かった

今までの誰よりも私を飲み込もうとしてくれた

この単純な思考は他の誰にも好まれず

きっとあなたなら受け入れてくれると


淡い色の花は

色を失い枯れ落ちた

そんなのはもう前のこと

だから今すぐに私を忘れて


繋がっていた糸などもう存在しない

目の前に見えた一つの道はもう二手にわかれているから

もうこっちを見ないで

自分の前だけ見ていて





2003年05月11日(日)



--きずあと--


二人でつけた傷は今も

確かに生きていて

ふと視線をやれば形を変えている


残されたその指が這ってできた

冷たい破片は今も

私の皮膚に埋め込まれている


生きた証ほどの価値は持たないけれど

二人の間でだけ存在を示す

必要の無いおもちゃ


2003年05月05日(月)



--形の重さ--


ただいつも私は居ないと

ここには存在していないと

押し付け考えていた


夢に見たその日は

案外簡単にやって来て

私の理想を潰し

気付けば過ぎていった


私は形がある

過ぎた日はもう何も無い

私はここに存在している

今はまだ消えない


2003年05月04日(日)


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