| ニューシネマパラダイス |
南街会館のラストオールナイトに行ってきた。 大阪に住んで様々な映画館で観て来たが 実は南街会館は初めてなのである。 というのもウチの家族は映画を観るというと ミナミではなくキタで観るタイプだったので もっぱら北野劇場や梅田劇場といった映画館で 東宝系列の作品は観てきたため、南街会館の 存在は知っていても高島屋に行った時に 大きな看板を見て劇場があると認識する程度だった。 そんな縁も無かった劇場だが、いざ劇場に入ると 何ともいえない郷愁感に襲われた。 建物は50年も建っているだけありかなり年季が入っている。 そして閉館ということでこれまでの上映作品のポスターが 所狭しと飾られていた。それこそドラえもんの大長編などは 懐かしさのあまり見とれてしまったほどである。 しかし、これを超える衝撃が後に私を襲った。 上映間の休憩でトイレに行こうとしたとき2階のトイレが 空いているという事なので2階に上がった。 そこであるものを見て胸が詰まりそうになった。 そこにあったのは売店の後ろに飾られている 古ぼけたアイスクリームの看板であった。 60〜70年代頃のデザインだろうか、かなり年季の入った それでいて懐かしさを覚えるデザインで、その看板が これまでこの劇場を訪れた人々を見つめ続けてきたことが 容易に想像できるものであった。 これを見た瞬間、私の心の中に眠っていた映画館の風景が 甦ってきた。まだ幼い頃、祖父に連れられて入った映画館では 上映と上映の間に売り子さんが通路を練り歩いて お菓子などを売っていた。今でこそ聞かなくなったが 「おせんにキャラメル〜」といった世界が広がっていた。 現在では売店に行かなければそういったものは買えないが、 この看板は映画が娯楽であった時代の一つの風景を表していた。 私がよく訪れている梅田の劇場でこのような看板を見る事が できなかったのは私が生まれる以前に梅田の劇場の多くが 改装や建て直しを経ているためだった。 しかし懐かしさを感じたのは震災前の神戸の劇場で このような風景によく出くわしたからだ。 現在、映画館はそのほとんどがシネコンに変わりつつある。 映画館単体では収益が取れないために商業施設の一つとして 映画館が存在するという現実である。 そのため昔ながらの古きよき時代の面影を残す映画館は 消え去ろうとしている。その中で形式的には シネコンであったものの単体の映画館としては 一等地に巨人としてあり続けた南街会館の閉館は 都心部における映画館の一つの時代が終わろうとしている 象徴的な出来事なのかもしれない。 この劇場にはかつて阪急グループの会長であった 小林一三氏が「商業映画発祥の地」としてのレリーフを 残したが、幸いにもこのレリーフはリニューアルした後も 展示されるそうだ。2006年に新しくオープンした際、 私達はどのような気持ちでこのレリーフを見るのであろうか。 その時が来るまで南街会館には長年の疲れを取ってもらいたい。 改めてお疲れ様でした、南街会館。素晴らしい時間をありがとう。
|
|
2004年01月31日(土)
|
|