よるの読書日記
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2003年11月30日(日) みのタウリン(←意味ないが元気そう)

『美濃牛』<殊能将之/講談社ノベルス>
山村で起こる連続殺人事件。愛憎恩讐渦巻きまくってる一族。
なかなか正史な感じでよろしいんじゃございませんでしょうか。
取材だの何だので訪れた土地には美少女が待ちかまえている。
これは浅見光彦のようですな。
飛騨牛だから価値があって、仮にどんないい牛育てても美濃牛。
考えてみるとなかなか興味深い。
同じ県内でも差があったりライバル意識があったり仲が悪い地域が
あるというのはよく聞く話であります。
岐阜県の場合はどうなんだろう?飛騨の方面、高山以南だと
富山との交流のほうが多いんじゃないかなぁ?
空の便使うとしても富山空港だろうし。
逆に美濃の方は名古屋なんでしょうね。実際お買い物は
名古屋ですると岐阜の友人が言ってました。

ミノタウロスって、母親の夫(父でなく)に迷宮に閉じ込められて
異父兄弟に殺されちゃうんでしたっけ?
これって結構物語を暗示してるよなぁ。うまいね。
講談社ノベルスは相変わらず凄腕揃いだのう。


2003年11月27日(木) 蚊トンボ男

『蚊トンボ白鬚の冒険』<藤原伊織/講談社>
元東大生・元プロボクサーで現テロリストの疑いで指名手配犯
兼アル中のバーテン(『テロリストのパラソル』
生まれはやくざの息子で現アル中気味飲料会社の広告担当(『てのひらの闇』
など、文武両道・清濁併せ呑むタイプの主人公が多かった中では、
今回の作品は特殊かも。
何しろ主人公の人間離れした能力の源は、生まれつきじゃなくて
蚊トンボだもんなぁ。世の中どうなっちゃってんの。

でも飄々とした性格の白鬚と主人公のやりとりは結構おかしみが
ありました。自分の中には来て欲しくないが。
大体虫の知能って……?
そういえば昔、夕暮れ時にちっちゃい虫が集団でぶんぶん空中に
集まっているのが気持ち悪かったなぁ。あれが耳に入ると
聞こえなくなると信じていた。何でだろ?!


2003年11月26日(水) 怨霊列島日本

京都への往復で読破。
『真晧き残響』十三神将<桑原水菜/集英社コバルト文庫>
四百年もこの人を超えたいだの征服したいだの思ってたんですかねー。
直江さん。疲れないか?疲れるだろう!
自分の中の気持ちを「LOVE]とはっきり気づいたとき
ショックだったろうね。この先出てくるのかな。
しかし四百年も時間あるとみんな変わるね!
晴家は女になっちゃったし、安田さんにいたっては対抗心の塊だったのに
今はわりと景虎のこと一応信頼してるし立ててるもんね。
現世で会ったばっかりの頃派手にいぢめていたけど(←遥か昔)、
初顔合わせのいざこざと全然違うもんねー。

ぼちぼちクライマックスな本編、
『神鳴りの戦場』<桑原水菜/集英社コバルト文庫> のほうは
ますます日本史テスト化です。いろんな時代の戦死者がうようよ
出てきちゃって大変です。早く収拾つけておくれ。


2003年11月25日(火) 三年前はスーパーファンタジー文庫だった。

『凶剣凍夜』<瀬川貴次/集英社コバルト文庫>
桐壺の更衣といい葵上といい、この時代のお産の話って難産が
多いような気がするけど、当たり前ですよね。貴族のお姫様は動かない!
ずーっと屋敷の中でじーっとしてるんだもんね。そりゃー体力ないわ。
筋肉全然使ってないもん。
とまああんまり関係ないことを「夜盗に襲われて逃げる姫君」
の場面を読みながら思ったりしたのですが、
まーこのシリーズともやっぱり長いお付き合いですねー。
同年代だったのに一回り下になってしまった主人公たち。
何だかなぁ。そして記憶の層にすっかり埃が乗ってるキャラ達再登場。
ごめん、えっと、……読み返さないと思い出せないや。


2003年11月23日(日) 頑張れ、息子

『女王と海賊』<茅田砂胡/中央公論新社>
女王、海賊王、天使に狼、殺し屋に銀幕の妖怪、意志のある
宇宙船、もう何でもありなこのシリーズ、実は私が一番
応援しているのはメインキャラクターの中で一番の普通人、
ダン船長だったりする。
もう他の人たちは凄すぎてあんたら自分の思うように
いきたらええわ、てなもんで感情移入できませんが、
彼は正直気の毒な面も多いと思う。
イヤじゃないか?この間まで確かに男だった筈の奴が
どういうわけだか女の身体になってあまつさえわが家に
入り込んで妻の忘れ形見を母親代わりとなって養育する状況。
おまけに絶世の美人だったりする場合。
大体母親が早死にだった場合
「あーお母さんは病弱で儚い人だったんだなー。」
と思うだろう!普通に。

それが……(笑いすぎで涙が出てきた)。
冷凍睡眠から甦った母親は自分より長身の女丈夫、
父親は自分が子供の頃から尊敬してきた伝説の存在で
余談だが義母はいつまで経っても若さと美貌をキープしまくり、
もう何が何だか天地ひっくり返りまくり?
って感じ?(反疑問形で読んでください。)

さらに子供らしくない子供達がうようよ自分の部屋に
入り浸り。不孝のどんぞこなダン船長。
彼は彼なりに一生懸命やってきたのにねぇ……。


2003年11月22日(土) トップ対談

『虫眼とアニ眼』<養老孟司 宮崎駿/徳間書店>
冒頭の、宮崎さんによる街構想が素晴らしい。
幼稚園で子供が泥んこになって遊べて火やナイフ、針と糸
といったものもどんどん使わせてみる。
町内に車を入れない(近所に駐車場完備)。
老人達、子供達にとって本当に居心地のいい町だと思います。

二人の対談も面白いです。頭のいい人たちの会話という感じ。
うまく伝えられないので気になる人は読みましょう(笑)。
養老さんは自分のお子さんに、
「勉強したって俺程度にしかならないぞ。」
とおっしゃったそうな……。
その程度がすごいんだってば。これだから学者様は、もー。


2003年11月16日(日) レトリック

『MATEKI−−魔的』<森博嗣/PHP研究所>
森さんの詩集。今間賀田四季の新シリーズを書かれてるみたいですね。
早く文庫化されないかな。当分かかるかな。
タイトルがいつも言葉遊びの要素を含んでいたり、
使う用語にこだわりがある人なんだなーとは前々から思ってました。
最近ちょっとだけご無沙汰ですけど、やっぱり詩でも小説でも
彼の世界ですね。

胸の上に手を乗せて寝ると安眠できないって、昔私も母に
言われたなぁ。


2003年11月15日(土) 蜘蛛女vsアイスクリーム女(byレオコン)

『黒蜘蛛島』<田中芳樹/光文社カッパノベルス>
お涼様、バンクーバーに降臨。
相変わらず泉田君を椅子にしたり男物のパジャマ上だけ
着て見せたり好き勝手されております。
一方で泉田君も自分を女神の盾に例えたり戦い前に言霊を
気にしたり、口ほどにもなくほだされてきてます?どうよ。
で、この二人の行く所必ず怪奇と室町警視&レオコンコンビあり。
犬猿キャリアをわざわざ毎回同時期に海外に送り込む警察上層部。
下手すりゃ国際問題勃発モノですぞ。こういうところに
縦割り行政の問題が……て言うほどの事でもありませんが。

お涼様、登場人物が自然死するようなナマヌルイ話は読まないってアンタ(笑)。
だからごんぎつねとかで泣きそうなんて作者に言われちゃうのでは。
しかし『赤毛のアン』の話してるときに、あらすじだけで
「それは『赤毛のレドメイン家』です。」
と素早く指摘できる泉田君、すごすぎるぞ。警察ミステリが好きで
英文科出身だけのことはあります。乱歩が大絶賛だというからには
かなり昔の作品なのではないでしょうか。よく知ってたなー。

関係ないが私は観てないけど2004年夏大ヒットした某映画は
「蜘蛛男vsタコ博士」だったりする。


2003年11月14日(金) 愚かな純愛か、儚い悲恋か

『蜻蛉』<若合春侑/角川書店>
いきなりの旧仮名遣い。この作家さんはパソコンに
オリジナルの用語を死ぬほど登録しているか
手書きで書いているかに違いない。

現代で同じ目に遭ってる女性がいたらよっぽどおばかさんか
相当運が悪いかだと思いますが、時代設定だけに
「不幸で数奇な運命に翻弄されるヒロイン」でも
まあ無理はないかという気がいたします。
うまい話にほいほいついて行くのはどうかと思いますがね。
これで監禁されて性的に苛まれてって、おいおいおい。
そーいう話なんかい。最後にちょっと愁嘆場っぽいものが
設けてありますが、そうでなかったら騙されて
SM小説を読まされたような気分になったことでしょう。


2003年11月13日(木) 敵討ちの要件

『バルト海の復讐』<田中芳樹/東京書籍>
いいなあ、勝気で強欲で丈夫なばあさん。理想です。
もっとも田中さんの小説には元気な年寄り多いけどね。
いいことです。
タイトルこそ壮大でいかついですが、どっちかっていうと
楽天的で主人公、復讐に向いてないかも。
「畜生裏切りやがってぶっ殺す!」
というより
「え?何で信じてたのに?どうしてなの何でなの
真実を教えて?」
とか言ってる人なんです。そういう呑気なところが
誰も信用しない、金のためには友達も売る、
みたいな人達の癇に障るんだと思いますが。

主人公の性格同様気楽に読める冒険小説です。
ただ復讐を遂げた爽快感というのを求める人には
ちょっと合わないかもしれない。
   『黒竜潭異聞』<田中芳樹/実業之日本社>
こちらは中国が舞台の短編集。
不思議なお話が多いです。私としてはこっちの方が
好みかな?しかし田中さんって銀河モノから中国古代史まで、
レパートリー広いなぁ。どんな頭脳してるんだろう。


2003年11月12日(水) 「異端」

『クロスフィア』下<宮部みゆき/光文社>
超能力というと、闇の結社がつきもの(笑)。
何でそう裏から手を回そうとするかな?
孤高のヒロインは確かに彼女なりの正義で戦おうとして
いたのでしょうが、彼女もまたその力を持て余して、
加害者となっていたことなども明らかになります。
だんだん展開が苛烈になってきて、あちゃーこれは
平穏には終わらないのかな?と思ったり。

勘のいい人、とかキング風に言うと輝きのある人、
というのはやっぱりいるのだろうし、
それで得をしている人もいるかもしれない。
歴史モノなんかでは普通にシャーマンって
尊敬されてる存在だったりするのに、
現代小説や映画では不幸な人がわりと多いですな。
「シックス・センス」の僕なんか典型?



2003年11月11日(火) 男のロマン。

『岳飛伝』参<田中芳樹 編訳/中央公論新社>
大体国の治世が乱れてる時に正義のヒーローというのは
報われないもんです。
王だか皇帝だかに政治力がないところにもって
人を見る眼もなくて奸臣を寵愛するときている。
バカ家臣は自分の利益を守ることしか考えてませんから、
有能な芽を潰すことに躍起になるという……。
それなのに国のために頑張っちゃうところがいかにも
忠臣の忠臣たる所以なのですが、見てて切ない。
むしろ敵将の方がライバルの力量を認めてたりして、
ますます切ない。
これで寝返っちゃったら単に自分の力を恃む奴に
なっちゃってこうは語り継がれなかったとは思いますが、
それはそれで、腕一本で生きていくのも一つの男の生き方?
なのでは。と思う私に男のロマンはわかってないのでしょう。
「愚直」「不器用」「高倉健」という感じ。
いや、健さんがかっこいいのは認めるが。


2003年11月10日(月) 帰るための旅

『記憶の技法』<吉野朔実/小学館>
好きなんですこの人の漫画。今回はタイトルからしてやられた。
修学旅行の書類から、両親に自分より2ヶ月後に生まれた
長女がいたこと、自分が五歳の時特別養子制度によって
今の両親に引き取られたことを知った華蓮。
学校や友人には祖母の見舞いに行くと伝え、両親には
修学旅行へ行く振りをして自分の出生を探す旅に出る。

結構のほほんとしてていかにも両親に愛されて育った
世間知らずなヒロインなんですが(高校生だから当たり前か)、
そんな彼女のサポートをしてくれる怜(さとい)君がいいです。
生まれつきの青い目のせいで父は母を疑い母には
奇蹟扱いされて育てられそうになった男の子。

二人が出会うのは思いもかけない事実なのですが、
そのせいで華蓮がどーんと落ち込むとか、トラウマが
一気に噴き出すのではなく、淡々と記憶を取り戻す
ところが読ませます。
辛い記憶を取り戻しただけでなく、自分についてとか、
両親への愛なども自覚する。そこがいいんです。


2003年11月08日(土) 中国でも大国

『岳飛伝』弐<田中芳樹 編訳/中央公論新社>
会う人会う人いい奴で皆ピンチに助けてくれて、
すぐ義兄弟になっちゃって、盃乾く間もないんじゃないかと
思ったりもいたしますが。
いやーもう破天荒で前後時々辻褄合わないけどいい。
面白ければオッケー!という感じです。
広大な土地に住む方々はあんまり細かいこと気にしないらしい。
いいのか、それで。いいのだ。


2003年11月06日(木) 微笑ましくも淋しい

『おまけの小林クン』12巻<森生まさみ/白泉社>
大林コンビが小林カルテットを喰っちゃってますな。
まあ面白いからいいけど。真央子ちゃん好きです。腹黒で。
とうとう12巻にして「お付き合い」することになった
小林(健)と小林(吹)ですが、どうなるんでしょうかね……。
この先いつかはばれる展開になるんでしょうが、
(あの敏い千尋にいつまでも隠し遂せるとは思えない)
あんまり小林クンを泣かさないであげてね……。


2003年11月05日(水) 岳飛君の生い立ち

『岳飛伝』一<田中芳樹 編訳/中央公論新社>
今度は本当に一巻です。岳飛さんの生い立ちから始まってます。
生まれた時から波乱万丈、それがヒーローの掟。
これからもバンバン逆風に晒されるんでしょうが、
頑張って欲しいものです。……エンディングを知ってると
イマイチ盛り上がれませんが。


2003年11月01日(土) 燃やせ!イイ女(良い子は真似しないこと)


『クロスファイア』上<宮部みゆき/光文社>
何だか久しぶりのような気がする宮部さんです、はい。
今回は超能力者のお話。相変わらずジャンルが広くて
いらっしゃる。確か、ブレイク寸前ぐらいの矢田亜希子主演で
映画化されてたような気がしますが、観てないので
それはまた別の話。
発火能力者のヒロインと言えばキングの『キャリー』とか
『ファイアスターター』とかどうしても思い出しちゃいますが、
それもまた別の話。
カップル拉致の現場に居合わせたヒロインが、被害者の
行方を追う……というと巻き込まれ型の話のようですが、
自ら火中に飛び込んでってるというか火を付けて更に
煽っているというか、な一面が無きにしも非ず。

こういう「超能力」ものというとうまくやらないといかにも
ハリウッド的なオハナシになっちゃうのですが、
常連しか寄り付かなさそうな古びた喫茶店のうらぶれた雰囲気なんか
うまく盛り込んで読者の気分を白けさせない宮部さんの腕には
さすが、と思います。


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