よるの読書日記
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2002年04月28日(日) 一人称に騙されろ!

『テロリストのパラソル』<藤原伊織/講談社>
最近図書館を、しかも本館と分館ちゃんぽんで
利用しているので読書内容が充実してます。
今回も文庫が出たときに迷ったけど買わなかった本。
これも乱歩賞だし、買っても外れではなかったかも。
タイトルがハードボイルドのわりにはおセンチで良い。

過去は学生運動盛んなりし頃の東大生、
中退して将来を期待された新進ボクサー。
ある事件のせいで地下に潜伏して、
現在はアル中のバーテンが主人公。
人生の表裏街道くまなく驀進!といった趣です。
おかげで洋書読めるほど賢いし
ヤクザ返り討ちにするほどケンカ強いし、
もう敵なしよ。

対するヒロイン(もしくは敵)は過去彼が共に暮らした
女性の一人娘。一種のリニューアルと言うやつです。
勝気で美人なお嬢様なんてちょっと類型的な
気もしないではないがな。
しかし、それが文字通り共同生活だったと言うのがスゴイ。
私なんかはちょっと違う展開を予想してしまったけど。
あれですね、これはまた別の話ですが、男性は
以前交渉のあった女性が産んだ子供の年を逆算とか
しないんですかね?考え出すと逆に世界中のお父さんの
胸に疑惑の火が灯るからダメ?あ、そうですか。

ところで小説に良くある現象ですが
一人称のヒーローは淡々と冷静に語っているように見えて
実は自己評価が低い傾向が見受けられます。
そして自分に対する周囲の感情にはわりと鈍感。
まぁどうせヒロインが「どこにでもいるような平凡な女の子」
とか書いてあっても映像化の際に演じるのは美少女アイドル、
という世間の相場からすればおかしくもないのか。

その他の乱歩賞作品
『破線のマリス』<講談社文庫>


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