2004年08月20日(金) |
歯医者が藪なわけではなかった |
歯医者に行った。 昨日のことがあるので、予約の電話を入れてからである。 たまたまキャンセルが出て、診療終了間際に滑り込むことが出来た。
「どうしました?」
「詰め物が取れてしまったんです」
「どれどれ…………これは―――取れたというよりは、割れてますね……」
「飲み込んでしまったらしいんですが」
「飲み込んでも身体に無害な材質なので心配ありませんが……本物の歯と同じくらいの硬度のはずなんです。余程硬いもの食べたんですか?」
「いえ。麺類でした」
「今度は、金属の素材入れましょうか。ただ、前のより丈夫にはなりますが、その分、歯の根っこの部分に負担がかかるので、気をつけてくださいね」
「あ、そうですかー…」
前のと同じのを入れてもらいたかったのだが、丈夫に越したことはないか。
「噛む力が強いのか、それとも、この上の歯が尖ってるからか……上の歯を削ってしまうという手もあるんですが、悪くない歯を削るのもなんですし」
そういえば、大分昔、まだ結婚前、別の歯科医にかかったとき、陶器の白い詰め物を詰めて、
「はい、カチカチ噛んでください。はい、今度は強く噛んでー」
と、言われて、その通りに強く噛んだら、「ぱきっ」という音がした。
その歯科医は、「あ」と声をあげた。
そのときも、
「……噛む力が強いんですね。やはり、金属にしましょうか」
ということになった。 そのとき治療していたのは、反対側の歯だった。
そうか……今回のこれも、あのときのあれも、歯科医が悪いのではなかったのか……
お盆の少し前から、我が家の建築工事がはじまっている。
三時にお茶とお菓子の差し入れに行こうと、ペットボトルと保冷剤と断熱材入りのバッグを用意して、出かけようと思ったら、玄関ポストに電気の請求書。
高っ!!
エアコンを省エネタイプのものに買い換えて以来、電気料金が安くてよかったんだが、先月は暑かったもんなぁ。 そして、現在進行形で、暑い。 今月分の請求もこんくらいは覚悟しておかなければ……
気を取り直して、炎天下の午後、自転車で、新居予定地へと走る。
辿りついたら、だれもいなかった。 ランディの実家に泊りがけで出かける前に、差し入れを持って行ったときも、だれもいなかった。 しかし、間違いなく、基礎工事は進んでいる。
もしや、我が家を造っているのは小人さんか?
暑さのせいで、そんなことを考えてしまいながら、ペットボトルと、アイスクリームを売るほど自転車に積んだまま、呆然と佇む。 前回は、ランディの車で来たが、今回は、ゆるいとはいえ、長くつづく坂を自転車でのぼって来た末のことなので、ダメージが強かった。 気を取り直し、関係者なので、『関係者以外立ち入り禁止』の現場に入り、デジカメで何枚か写真を撮った。 隅の方に、小型の冷蔵庫があるのを発見し、持って来た飲み物を入れておこうかとも思ったが、職人さんを気味悪がらせても申し訳ないので持って帰った。
もう、お茶代は営業さんか現場監督さんに、ぽち袋にでも入れてまとめて現金で渡してしまおうか……
お盆前に、冷麺を食べている最中に、奥歯の詰め物が割れてしまったので、歯医者に行こうとしたら、今日まで夏休みだった。
荷台にアイスとペットボトル積んだまま、シャッターの前で呆然とした。
気を取り直し、郵便局に行き、親に頼まれていた中国茶を送ろうとして、ダンボールに封をしていなかったのに気づいた。 仕方なく、100均ショップに入ってガムテープを買い、郵便局に戻って無事に小包を送った。
その後、ユニクロでTシャツを買い、代金を払い、レシートとお釣りを貰って、買ったものを忘れて帰りそうになった。
総ては夏の暑さのせいだ、と、自宅に帰り、職人さんたちに差し入れするつもりだったアイスを食べてやさぐれた。
去年の五月から、家を建てようと探しはじめ、ようやく土地が見つかり、設計の概要が決まり、書類上は着工と相成った。
実質的な着工は明日だが、今日は日取りが良いということで、地鎮祭――の真似事をした。 なるべくやりたかったが、どうしてもやりたかったわけではないので、諸般の事情により、神主さんに祝詞をあげて貰うには及ばない、ということにした。 その分で、ソファを少しだけいいのが買える。
依頼した工務店が特にそうなのが、建築業界みんながそういう傾向なのか、験を担ぐようで、何社かに見積もりを依頼し、競合して貰い、その中から一社を選び、契約しようと決めたそのときにも、翌日でもいいと言ったのだが、
「いや、明日はよしましょう。どうせなら大安に契約しましょう」
六曜の暦つきのカレンダーを開いてみる。
「明日も別に悪い日じゃないでしょう?わたしたちは気にしませんが」
「いや、折角ですし。えーと、大安でも、よくない日があるんですよ。会社に問い合わせますねー」
で、契約日も、書類上の着工日も、大安吉日を記入し、実際の着工日も大安、そして、今日も大安、ということで、土地のお清め。 日本酒と、塩と、米を撒き、工事の安全と、家運隆盛を願う。
その後、御近所に粗品持って、御挨拶。 周囲も真新しい家ばかりだが、いろんな人が住んでいる。
「すぐそこの空き地に家を建てます。建築中は御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
という挨拶をしに行った初対面の日に、
「お子さんは?」
という質問をする人がいたのは驚いた。
「まだです」
と言ったら、
「あらー、まだ新婚さんなのかしらー」
なんでそんなにも詮索するんだ?
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