これまで仕事に邁進して年齢を重ねてしまった訳だし 40歳を超えたこれから子供を希望するというのは 現実的にどういう事かは臨床を経験してきて、少しはわかっているつもり だから、子供を産まなきゃ申し訳ないって思うような関係はきつい 既に子供さんのいる方ならそういった気持ちもなくお付き合いできると、自己都合で思っていた所があった
それは、私の悪かった所だ 自分の本心と向き合わず、無理だと決め込んで理由を後付にして逃げていただけ 病弱で医師に反対されたのを言い訳に看護師になる事にトライもせずに忘れたつもりだったのと同じ 何も成長してない そう気付いて 改めて自分を見つめなおした 最初から子供を望まないというのはなんだか違う いらないと言われるのも違う 自分にとってはとても不自然なこと そう思っている本心に気付くことができた そういう意味では、過去に感謝している
先日とあるレストランが閉店になった
看護学校に通っていた10年前 帰宅途中にふと看板に吸い寄せられてからというもの 学校帰りにちょこっと 休みの日にちょこっと 息抜きがてら、レポート仕上げに、読書に、映画館の待ち時間に、弟と、母と、友人と といった具合に通っていた私の愛するレストランだった
そのレストランの料理がこそ、厳しい看護学生生活を皆勤でやりとげる後押しをしてくれたのだと今でも信じて疑わない
合間静岡にいる時はもちろんいく事はなかったが、それでも同じレシピを再現したりしてその味はいつでも私の胸にあった
営業最後の日にもちろん行った そのお店に通っていた常連客とおぼしき何名かは店長に手土産のようなものを渡していた
やっぱりな〜しまったな と少し頭をかすめる‘いい人‘病 買いに出るという行動もできなくはなかった
でも、しなかった
「お手紙ありがとうございます!」 店長が目に涙をためてレジまで走ってきた 「厨房に行ったら皆泣いていて」 そういった店長は流れる涙を止める方法なんてもう頭にはない様子だった 「開店当初からのお客様なんてそういないんです。お手紙、本当に本当にありがとうございます」 言葉を拾うのもやっとの震えた声にもらい泣きしそうになった モンブランで私が書いたこの10年のお礼をスタッフが読んでのことだった 物を贈るのはある意味たやすい だけど私はエゴイストだから もっと偉そうなことをしたかった 思い出に残るエピソードをその時最後まで頑張ったスタッフに送りたかった それは、成功体験になると信じたかった
私が看護師の卵だったころ 辛く過酷な日々もあった 辛い事があってもそれに耐え、貫くことができたならば それをくみ取っている人もまた存在するんだと 知って欲しかったから
「どうしてなの?私には権利がないって言うの?あの人とずっと暮らしてきたのは私なのに!」 呼吸困難で緊急入院してきた患者に付き添ってきた女性がステーションでそう叫んだ グリーフケア看護師と臨床心理士が個室で5時間話を聞いた 要約すると、その患者には50年以上も会っていない戸籍上の妻が存在 付き添いの女性はいわゆる内縁関係にある人だった 師長、部長、副院長も含めて会議が開かれた 結果、戸籍上の妻に連絡することになり 患者もそれに不服そうだが同意 内縁の人がそれを受けてステーションに前のめりになってきた状況での言葉だった
連絡の取れた戸籍上の妻はこう言った 「何がなんでも離婚なんてしてやりません。明日そちらにうかがいますから、その女には来ないように言ってください。妻は私ですから。」 離婚の事はこちらには関係ないが、まくしたてるように電話口で声を荒げていたそうな その女性と妻が対峙する事はついぞないまま患者は他界した 看取ったのは戸籍上の妻 「やっと帰って来てくれたのね。」 患者が空へ旅立った日妻はそう口にして、患者を連れて帰って行った 夫婦の間に何があったのかは知りようもない だけど、妻が病院に通うようになってから 面会ギリギリの時間に内縁の人は毎日来て、愛おしそうに患者の手を撫でていた 返事をすることもできなくなっていく患者を前に、おそらく看取れない事も想定していただろう 戸籍上の妻よりも長く共に暮らしてきたのに、それで良かったんだろうか
職業柄爪は深爪にならない程度に短く切っている でも、毎日利用者さんの手足の爪を切っていて 自分の爪を切る事を忘れていたりする これからの時期は、空気の乾燥も手伝って私の手は哀しいくらいガサガサに手荒れする ハンドクリームでは追い付かないくらいだ
病院勤務時代は1処置1手洗いするので、本当にもう悲惨な事になっていた 寝る前にヘパリン類似物質なるクリームを塗りこんで塗り込んで絹の手袋をして寝るといった具合だったが もちろんそれでも仕事の日は昼になる頃にはガサガサ あかぎれにならないだけましと思う事にしていた
職業柄手を大事に使わなきゃいけない人はたくさんいるだろう 一瞬で回復!みたいなものがあればいいのになと思う
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