野生の森
高瀬志穂



 拍手より(苺飴)



『トゥルルルル…。』

 いつもの様にボタンを押していつもの様に相手を待つ。メールでもいいのだが、それではいつ相手に伝わるか分からないから電話を使ってみる。この時間なら彼以外が出ることもないだろうから安心してかけられる。
 電話というのは誰が出るか分からないから少し不安なのだが、相手が分かっているので安心である。

「やっぱり携帯欲しいなぁ…。」

 そんなものはまだ必要ない、と買って貰えてない。自分だけではなく相手も持っていないのだからそんなには気にしていないのだが、最近は自分だけの電話も欲しいなぁと思ってしまう。
 そしてその音が終わり、スピーカーから声が聞こえてきた。

『もしもし。』

 聞き覚えのない男の人の声にキラは一瞬躊躇った。アスランの家族は両親だけで、父親は普段はほとんどプラントにいるということでアスランと母親が暮らす月の家にはまずいなかった。
 アスランに似た声。けれどいつも聞くアスランの声じゃない。

『もしもし?』
「あ、あの!アスランいますか!?」

 名乗ることなく慌ててキラは用件を先に述べてしまった。けど後悔してももう遅い。言葉は相手に伝わってしまったのだから。

『俺がアスランだが…。』

 先程の自分の失態なんて一瞬で消えてしまった。

「…え?」

 この聞き覚えのない声の主は自分の親友と名乗った。そんなはずはない。彼の声を間違えるはずはない。よく似ているけれどアスランはこんな大人びた声ではない。
番号を押し間違えたのかとキラは慌てた。

「ご、ごめんなさい。間違えました!」

 そう言ってキラは慌てて通信切断のボタンを押した。ツーッツーッとスピーカーから音が聞こえる。画面に切り替えず音声のみの通話だった為に相手がどんな人物だったかは分からなかった。わかったのはアスランによく似た声で同じ名前の違う人に電話をかけてしまったということだけだった

「…あれ?僕短縮でかけたよね?」

 キラは先程かけた番号を確認した。するといつもかけるアスランの家の番号に間違えなかった。番号が変わったという話は全く聞いていない。
 キラは改めてボタンを押す。すると聞き覚えのある声の主が現れた。

「アスラン……?」
『キラ?どうかしたのか?』

 様子のおかしいキラにアスランは心配そうに声をかけた。

「ううん、なんでもない。」

 先程のことはなんだったのだろう、とキラはアスランに用件を伝えた。



 切られた電話をアスランは見つめていた。

「どうかしたの?」

 電話を不思議そうに見つめている人物に、キラは声をかけた。一体何をにらめっこしていたのであろうか、と。

「いや、「アスランいますか?」って言われた。」
「?アスランならいるじゃん。」

 僕の目の前に、とキラは不思議そうにアスランに問掛けた。今キラの目の前にいる人物こそアスラン・ザラその人である。

「いやそうなんだが…そう言ったら慌てて間違えました、って。俺と同じ名前の友達でもいるんだろう。」

 しかし間違え電話なんて珍しいなと思う。世の中がこんなにも便利になったというのに、何か操作でも間違えたのだろうか。

「アスランって名前、そんなにいるのかなぁ…僕は聞いたことないけど。どういう子だったの?」

 不思議な出来事にキラはアスランに問掛ける。

「子供かな。…キラの昔の声によく似ていたな。」
「ふぅん…。」

 含みのあるようなないような返事にアスランは笑った。

「嫉妬したか?」
「…何に。」
「昔の自分に。」

 図星なのか全く違ったのかはわからないが、キラは頬を少し膨らませた。

「しないよ、そんなもの。」

 なんで昔の自分に嫉妬するのさ、とキラはそっぽを向いた。
 それにしても不思議な電話であった。間違い電話というより、昔のキラと繋がってしまったかのようだった。それほどまでに先ほどの声はキラ、いやキラの幼い頃によく似ていたのである。

「パパーママー。」

 二人が会話をしていると、小さな少女が名前を呼ぶ声が聞こえてきた。待ちくたびれてしまったのであろう。

「はいはい、ごめんね、待たせちゃって。」
「よし、行くか。」

 ひょいっとアスランは自分の足元にいた子供を持ち上げた。あの頃のキラのことを思い出しつつ、今隣で微笑んでくれているキラをいとおしく思いながら、久々の休暇の家族旅行へと出掛けた。

++++++

 何がなんだかわからないですね、はいすいません。とりあえず設定は苺飴で。
 元ネタは知人(もう30は超えてる)の話だったりします。職場(実家)で電話が鳴り「○○(名字ではなくて名前)いますか?」と言われた為にその人が出たそうです。かけて来たのは小学生くらいの男の子で。
 でその人が「○○です」って出たら「え、あ、切ります」とかなんとか言って切ってしまったそうです。
 向こうは友達にでもかけようとしたのでしょうね…けれどその相手が電話をした相手の名前と、そこの家の子供が偶然同じ名前で…その話を聞いて萌えたので勢いだけで書いてみました。
 だから私が知っているのはアスラン側の話で、キラ側の話ではないのですが。一体どこにかけようとしてたのかなぁって。もしかして過去と未来が…!!と電話という相手の見えないどこにでも繋がる素敵なものに夢というか妄想を膨らませてみたり。

2008年02月23日(土)
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