「硝子の月」
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2002年08月02日(金) <建国祭> 朔也

「……そういうワケじゃ……!」
 ムキになってルウファを睨んだティオは、次の瞬間ふっと目を見開いた。
「……あれ?」
「……え?」
 言葉を止めたティオに、ルウファは奇妙な顔でその視線を追いかける。
 ルウファの頭越しに、後ろの窓。けれど見ても空が広がるばかりで特に何も見当たらない。
 グレンも一緒にそちらを向き、眉をひそめて少年に問い掛けた。
「どうかしたか?」
「いや、今の――」
 ティオが言いかけたとき。
 たった今彼が見たものが、もう一度窓の外をよぎった。見なれた何かによく似た、黒いシルエット。
「あれ、ひょっとして――」
「ルリハヤブサ……?」
 アニスより暗い色の、けれどそれは確かに――ルリハヤブサのようだった。


紗月 護 |MAILHomePage

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