「硝子の月」
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そういったわけで、一行はアンジュの屋敷に来ていた。 「予定よりずっと早く着いたし宿代は浮いたしで万々歳ね♪」 ルウファは満面の笑みでそう言った。 「これで傷が痛まなけりゃな」 ティオの言葉には刺があった。 余っているというアンジュの言葉を証明するかのように一人一部屋あてがわれた一行は、何故か少年の部屋に集まっていた。 「悪かったわよ」 流石に素直に謝る少女に、それでも何故か反感のようなものが治まらない。 「……あのお嬢様に対して騙し討ちみたいなことしたのが気に入らないの?」 紅玉の瞳を煌めかせて、ルウファは本人ですら気付かなかった苛立ちの原因に鋭く切り込んだ。
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