「硝子の月」
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「ひどいじゃないかひどいじゃないかひどいじゃないか置いてくなんてそりゃ君たちが僕の美貌と力に嫉妬するのもわからないじゃないけどでも置いてくなんてそんな非人情なことってないんじゃないのかねえねえちょっと聞いてるのかい?」 いかなる手段を使ってか、出発から3日後に追いついてきたシオンが恨みがましくまくし立てた。 「ああでもわかってるよルウファは僕に追いかけてほしかったんだよねそれともこいつらに騙されたのかなああそうか大丈夫僕がちゃんと救い出してあげるから安心してまかせておいてハニー!」 3日間誰にも相手にしてもらえなかったフラストレーションだろうか。息継ぎすらない。 とうとう人間としての体の機能の限界を超えてしまったシオンに、ティオは深い深いため息をついた。 「誰か黙らせろよアイツ……」 「ピ」 「できるもんならやってるっつーの」 げんなりして男二人と鳥が顔を見合わせたが、シオンのテンションは下がる兆しも見せない、どころか上がりっぱなしだ。 二人と一羽が恐る恐る横を見ると、赤毛の少女が震えていた。 もう少し詳しく言うと、赤毛の少女の拳が震えていた。 (――怖) 見てはならないようなものを見た気になって、ティオは目を逸らす。触らぬ神に祟りなし。
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