「硝子の月」
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「あ」 ベッドの上に起きあがったティオは、ぼんやりと周囲を見回した。 「……れ?」 見なれたようなわからないような部屋を見て、それが宿の一室だと気付く。そうだ、自分は確か怪我をして…… 「ピィっ」 「わ」 ばさばさという音がして、ベッドの上にちょこんとアニスが乗っかってきた。 心なしか嬉しそうにこちらを見上げてくるアニスに、ティオは優しく笑いかける。 「そっか……心配してくれたのか?」 「ピィ」 「サンキュ。アニス」 アニスに頬を寄せると、アニスも嬉しそうに頭を摺り寄せてきた。と、その時、横の方から軽い咳払いが聞こえてくる。 驚いて顔を上げると、いつの間にやらそこにルウファとグレンが立っていた。 「……あ、んたら……」 「おはよ。調子はどう?」 ルウファに問われ、ふと気付く。傷の痛みはもう無い。 「……あれ?」 「大丈夫みたいね」 戸惑うティオの顔を覗き込み、ルウファはことさらにっこりと笑って見せた。 「ところで。あたしたちもそれなりに心配したんだけど?」 「……は?」 「何か言うことないわけ?」
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