「硝子の月」
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2002年05月29日(水) <首都へ> 朔也

「あ」
 ベッドの上に起きあがったティオは、ぼんやりと周囲を見回した。
「……れ?」
 見なれたようなわからないような部屋を見て、それが宿の一室だと気付く。そうだ、自分は確か怪我をして……
「ピィっ」
「わ」
 ばさばさという音がして、ベッドの上にちょこんとアニスが乗っかってきた。
 心なしか嬉しそうにこちらを見上げてくるアニスに、ティオは優しく笑いかける。
「そっか……心配してくれたのか?」
「ピィ」
「サンキュ。アニス」
 アニスに頬を寄せると、アニスも嬉しそうに頭を摺り寄せてきた。と、その時、横の方から軽い咳払いが聞こえてくる。
 驚いて顔を上げると、いつの間にやらそこにルウファとグレンが立っていた。
「……あ、んたら……」
「おはよ。調子はどう?」
 ルウファに問われ、ふと気付く。傷の痛みはもう無い。
「……あれ?」
「大丈夫みたいね」
 戸惑うティオの顔を覗き込み、ルウファはことさらにっこりと笑って見せた。
「ところで。あたしたちもそれなりに心配したんだけど?」
「……は?」
「何か言うことないわけ?」


紗月 護 |MAILHomePage

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