「硝子の月」
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「ああ、猫ばーさんの屋敷か」 「何!?」 グレンの言葉に誰より反応したのはシオンだった。 「それじゃルウファ、あの仔猫達を連れ戻してくれるんだね?」 「んなわけないでしょ」 即答。と同時に抱きついてきた彼に拳骨を振り下ろす。 (やっぱり未練があったのか) 彼と少女のどつき漫才を見ながら、ティオは思うでもなくそう思う。 「じゃあ何しに行くって言うんだい?」 だからそれを尋ねたのは、出来たばかりのたんこぶを押さえる青年のほうが早かった。 「あんたの為じゃないことは確かだから安心していいわよ」 青年に素っ気無くそう言って、彼女はティオに「行くんでしょう?」という視線を向けた。 話の流れと視線の流れからして、それは自分の為なのだろう。 少年は数瞬の躊躇
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