「硝子の月」
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2002年05月20日(月) <伝説> 瀬生曲

「ああ、猫ばーさんの屋敷か」
「何!?」
 グレンの言葉に誰より反応したのはシオンだった。
「それじゃルウファ、あの仔猫達を連れ戻してくれるんだね?」
「んなわけないでしょ」
 即答。と同時に抱きついてきた彼に拳骨を振り下ろす。
(やっぱり未練があったのか)
 彼と少女のどつき漫才を見ながら、ティオは思うでもなくそう思う。
「じゃあ何しに行くって言うんだい?」
 だからそれを尋ねたのは、出来たばかりのたんこぶを押さえる青年のほうが早かった。
「あんたの為じゃないことは確かだから安心していいわよ」
 青年に素っ気無くそう言って、彼女はティオに「行くんでしょう?」という視線を向けた。
 話の流れと視線の流れからして、それは自分の為なのだろう。
 少年は数瞬の躊躇ためら)いの後に頷いた。


紗月 護 |MAILHomePage

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