「硝子の月」
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2002年03月27日(水) <始動> 瀬生曲

 けれど、他にどうすればいいのかもわからない。
「……何なんだよ」
「ピィ……」
「うん、ごめんな。俺らしくないよな」
 湧き上がる弱気を隠せないままに、アニスに頬を寄せた。


「それじゃこの子達はいらないって言うのかい?」
「ええ」
 困惑の表情を浮かべる老婆に対して、ルウファはきっぱりと頷いた。3匹の仔猫達は既に老婆の腕に移っている。
「かわいいその子達を危険に曝す訳にはいきませんから」
 本音三割建前七割といったところか。
(三割もあれば上等か)
 二、三歩下がった所でグレンはそんな風に思う。
「それじゃ、報酬は先に交渉したとおりに」
「ちょっと待ってください」
 しっかり者の少女が老婆の言葉を遮る。
「何だい? あれ以上は暴利だよお嬢ちゃん」
「値上げ要求じゃありません。話によってはお金はいりません」
 老婆もグレンも、意外な面持ちで彼女を見詰めた。


紗月 護 |MAILHomePage

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