「硝子の月」
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「アニス」 名前を呼ぶと、アニスはふわりとティオの頭に降り立った。爪を立てずにやんわりと座り込む姿はちょっと「ぷりちー」かもしれない。 「……なんで頭かなそのトリ」 「トリって言うな。アニスだ」 いや確かに鳥なのだが、ティオだってニンゲンなんて呼ばれ方をしたらイヤだ。一応訂正を入れ、それ以上青年には構わず部屋を出る。 けれど階段を下りようとして一段目、脇腹の痛みに思わず顔をしかめた。 「――てっ」 「……ピ」 上から覗き込んできているらしいアニスが心配そうに鳴く。 「……大丈夫だよ」 ティオは上目遣いに答えた。頭に乗ったのはひょっとして、肩に乗って左右どちらかにバランスを崩すのを防ぐためなのかもしれない。 ともかくそろりそろりと慎重に階段を降りた。ようやく一階にたどり着いた頃には、わずかに汗まで滲んでいる。 「……まどろっこしい奴だな、君は」 「うわっ!」 ホッとした瞬間に後ろから声をかけられ、ティオは思わずのけぞった。脇腹に走る痛みに言葉も出なくなる。 気が付けばそこには、何故かシオンが腕組して立っていた。
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