「硝子の月」
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「『悪夢の接吻』」 呪文が完成すると同時に何かがシオンの唇を奪う。ティオにはそれは女の影に見えた。 「あ……」 小さく声を発して、口付けを受けた青年はぱたりと倒れる。安らかな寝顔……とはとても言えない。 「やっと静かになったわね」 「「そうか?」」 悪夢にうなされる彼を見下ろして頷く少女に、残る二人は疑問の言葉を口にする。 そのタイミングが同じだったことに、少年は居心地の悪さのようなものを感じたが、黙っていた。 「貸して。返してくるわ」 ルウファはグレンから仔猫達を受け取る。 「一緒になんて連れていけないもの」 慈しむ、優しい眼差し―― 「報酬はきっちり貰わないとだし」 気のせいだったかもしれない。
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