「硝子の月」
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「ふふふ、照れちゃっているんだね。しかし安心してくれルウファ! 君が僕を信頼して任せてくれた猫洗いはこれこの通り、無事完遂した!」 「……ってちょっと、そのコたちどうしたのよ。まさか盗んできたの?」 ルウファが不審いっぱいの顔で3匹の仔猫を示すと、シオンはさも嬉しそうにへらりと笑った。 「いや、猫洗いが終わってあのお婆さんのとこに報告に行ったらさ、なんだか猫の話で盛り上がって一晩経っちゃって。ごめんねルウファ、君を寂しがらせてしまって……」 「いや、あたしが聞きたいのはそんな脳みその腐れたようなアンタの幻想じゃなくて」 ルウファの対応はどこまでもクールだった。いつものように景気よく殴り飛ばさなかったのは、一応同じ部屋にいる怪我人に気を使ったからなのかもしれない。 しかしそれに気付いた様子もなく、シオンはにこにこと仔猫を示して見せた。 「それで、報酬代わりにこのコたちをもらってきたんだv ほら、かぁわいいだろー?」 「――報酬……?」 にゃぁー、と鳴く仔猫と目尻の下がり青年を前に、ルウファが静かに、なんとも言えないほど静かに問い返す。ティオはそそくさとアニスを抱き寄せ、グレンは黙って手近にあった割れ物を回収した。 「ほーらお前たち、僕の未来の花嫁に挨拶は?」
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