「硝子の月」
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「いつ、なぁ……」 グレンが唸る。 「別に急ぐ旅でもないからな」 「あたしは一緒に行くことが目的だから」 二人とも言外に『ゆっくり休め』と言ってくれていることがわかる。しかしティオはそれにおとなしく甘えることが出来ない。 「じゃあ、すぐ出よう」 空になった器をルウファに戻し、ベッドを出ようとする。 「何言ってんだその怪我で」 「今だって痛いんでしょ」 「いつまでも寝てられっかよ」 確かに傷は痛んだが、どうも落ち着かないのだ。 「……何焦ってんだお前」 そんな彼を見下ろして、グレンが言った。 「焦ってなんか…」 「待ちくたびれたかい、僕の小鳥v」 唐突にドアが開き、仔猫を三匹も抱いた青年が歌うように言った。 「忘れてたな」 「戻って来なくてよかったのに」 グレンが無感動に言い、少女はうんざりとした顔をする。
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