「硝子の月」
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2002年02月16日(土) <始動> 瀬生曲

「いつ、なぁ……」
 グレンが唸る。
「別に急ぐ旅でもないからな」
「あたしは一緒に行くことが目的だから」
 二人とも言外に『ゆっくり休め』と言ってくれていることがわかる。しかしティオはそれにおとなしく甘えることが出来ない。
「じゃあ、すぐ出よう」
 空になった器をルウファに戻し、ベッドを出ようとする。
「何言ってんだその怪我で」
「今だって痛いんでしょ」
「いつまでも寝てられっかよ」
 確かに傷は痛んだが、どうも落ち着かないのだ。
「……何焦ってんだお前」
 そんな彼を見下ろして、グレンが言った。
「焦ってなんか…」
「待ちくたびれたかい、僕の小鳥v」
 唐突にドアが開き、仔猫を三匹も抱いた青年が歌うように言った。
「忘れてたな」
「戻って来なくてよかったのに」
 グレンが無感動に言い、少女はうんざりとした顔をする。


紗月 護 |MAILHomePage

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