仕事最終日。
その日の業務は難なく終わりを迎えようとしていた。
これで、ココでの仕事は終わり。
明日からは仕事でリュウに会う事も無くなる。
正直
寂しかった。
仕事も後30分程で終わろうとしていた頃
給湯室から出た私の目の前を誰かが通り過ぎようとした。
ぶつかりそうになって、一瞬身を引っ込めながら相手の顔を見た。
リュウ。
リュウも私の顔を見ている
何故か険しい顔で
私の顔を見たまま、私の前を通り過ぎる
その、険しい顔に耐えかねて
「お疲れ」
と一言だけ声をかけた。
「お疲れ」
リュウもそう声をかけると私から目線を反らして
そして、事務所へ入って行った。
何だったんだろう、あの目は。
そうこうしているうちに
私の仕事最後の時が来た。
この会社で働く最後の時が来た。
そう、上司がいた。
いつもガミガミ怒っていたけど、
何だかんだ言ってサッパリしてて好きだった上司。
「本当、よくやってくれてありがとうね。
次の仕事が見つからなかったら、いつでも戻ってきてね。」
そう言いながら、チンパンジーのライターをくれた上司がいた。
そう、友達がいた。
「寂しくなるよー。」
とずっと言い続けてくれた友達がいた。
「ご飯食べに行こうね、絶対」
そう言ってくれた友達がいた。
そう、弟みたいに可愛がってた子がいた。
ハードなコースでいつも私の退社時間までに戻って来れないのに
「最後くらい顔見せてよ。」
てメールしたら、本当に時間前に戻ってきてくれて
最後の最後に笑顔で見送ってくれた子がいた。
最後、弟くんに手を振って車に乗り込んだ時
リュウは、私の車のそばのダンボール小屋にダンボールを片付けに来ていた。
だけど、こちらを見る事も無く
トラックへ戻って行った。
給湯室で見た険しい顔
あれが最後に見たリュウの顔になったら
寂しすぎるよ。
私は車を発車させた。
ありがとうございました。
お世話になりました。
そして私はリュウへメールする。
「最後の
お先ー。」
返信は来るのだろうか。
肉には連れてってもらえるのだろうか。
不安だけが、そこには残った。
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