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2002年01月02日(水)
■『プラネテス』2 ★★★★☆

著者:幸村誠  出版:講談社  [SF]
【内容と感想】
 モーニング掲載の漫画。1巻が買えず2巻のみを読了。絵柄もなかなかうまく、背景も含めてデッサンがしっかりしている。

 地球の軌道上を回っている宇宙のゴミ(デブリ)を回収する仕事に就いている星野八郎太(通称ハチマキ)が主人公。時代は2075年で、EDC(地球外開発共同体)により木星系における資源採掘基地の建設が進められていた。ハチマキはその先駆けとして建設中の木星往還船の乗組員になりたいと、厳しい試験に備えて必死で努力している。しかしその木星往還船の設計者ロックスミスは宇宙船以外愛せない性格で、人の命も何とも思わず部品としか捉えられない人物だった。

 ハチマキの職場に彼の試験期間中のピンチヒッターとして新しく入ったタナベは、仕事はまだ半人前のくせに自分の信念を強く持っており、ハチマキに対して「それは間違っている、愛のない選択は良い結果にならない」と強く主張する。自分の夢、自分の望みのみを追っかけて、周りを思いやる事なく宇宙に行く事にがむしゃらになっていたハチマキに、タナベはそれでは駄目なんだと説得を続ける。ハチマキは自分の原動力となっている宇宙船乗りのヒロイズムを否定され、揺さぶられる。むかつきながらも反論できない。

 タナベの影響で変わり始めたハチマキは、自分の目指していた宇宙空間は空っぽで孤独な世界であることに気付き「これが自分の望んでいる宇宙か?」と愕然とする。そして地球でさえも宇宙の一部であることを理解し、自分が一人で生きているのではないことを実感する。


 私が思うに、生物は生活環境を広げて繁殖しようとするかなり強い指向性を持っている。水の中から大地へ、空へ。自らの形を変え、環境に働きかけ、生命は活動空間を広げようとしている。人類は地に満ち、ついに宇宙に進出したのである。この流れ自体は変えられないだろう。宇宙を目指すということは生命に刻み込まれた欲求なんだと思う。身体を変化させることで環境に適応してきた生命は、今、道具を使用したり環境に手を加えたりすることで過酷な宇宙空間に適応しようとしているのである。

 だが、ハチマキの目指しているようなただ一人だけが宇宙に進出するというのでは意味がない。宇宙に定住する事が必須なのだと私は思っている。英国のことわざに「一つのかごにすべての卵を盛るな」というのがあるが、宇宙的な規模で考えると一つの惑星のみに生命が集中しているのは滅亡の可能性をはらんでいて危険である。危険を分散させるためには、地球外、太陽系外でも繁殖することが大切なんだと思う。

 生物として種を維持しようとすると個体数としては最低でも40体くらいが必要だ、とどこかの大学教授が話していた。最低でもそのくらいの、現実的には社会が築けるくらいのもっと多くの人数で宇宙に定着する事が必須だと、私は思う。地球から出ること、太陽系から出ること、増え広がり宇宙に満ちること。その第一歩を踏み出した時代をリアルタイムで経験できるのは、ラッキーだと思う。人類の未来に平和と繁栄を。


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