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旧あとりの本棚 〜 SFブックレヴュー 〜
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著者:スコット・スミス 出版:扶桑社 [MY] bk1
【内容と感想】 普通の人が、偶然大金を手にしたことで転落していく経緯を描いたスリラー小説。人間の心の闇が非常に怖く描かれている。
主人公はよくいる小市民タイプ。440万ドルという大金を墜落したセスナ機から偶然見つけ手にする。さっさと届け出ればよかったものを、兄とその友達に唆され、犯罪絡みが明らかなその大金を着服してしまう。これが大きな間違いで、それを発端に人生が少しずつ狂いはじめる。
せっかくの大金も発覚を恐れて使うこともできず、はやる兄達をなだめながらほとぼりがさめるのを待っているのだが、事体は思ったようにうまくは運ばない。主人公の本来の小賢しい性格が、次第に前面に出て来る。ひとつひとつは本当にささいなことがきっかけだが、嘘を隠す為に嘘をつき、ごまかそうとする小細工が事態をますます悪くする。どんどん泥沼にはまって抜けだせなくなる。
この怖さ。人間の欲望の業の深さ。ちょっとしたきっかけで、普通の人がいともたやすく豹変してしまう辺りが一番怖い。ちゃんとした信念と誘惑を退けるだけの勇気が無く、思慮が浅く、欲深い。人間の弱さを描いた反面教師的な作品である。
小説としてはとても面白く、ぐいぐい引き付けるだけの力量がありあっという間に読める。しかしテーマがテーマだけに読後感はスッキリとはしないかも。まぁ、これがハッピーエンドになるのも何だかなぁ、と思うのでこれでいいのだろう。映画化されたはずだが、たいして噂を聞かなかったところをみるとそれほどいいものではなかったのかもしれない。観ていないけれど。
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