moonshine  エミ




2003年08月15日(金)  ゆく夏

 再び愛知へと旅立つ恋人を見送りに、一緒に空港まで行く。

 真っ白いTシャツとチノパンに黒いバッグパックを背負ったしん氏は
 伸びた前髪に無精ひげ、なんだか本当に「バッグパッカー」みたいで
 サラリーマンって感じは全然しないんだけど、
「会社の人へのおみやげ、どうしようかなあ」
 とか
「向こうに着いたら大雨かなあ」
 とか
「旅費の引き落としけっこう来るなあ。お金ないなあ。
 ま、休みが終わったらすぐ給料日かぁ」
 とか、なんてことないそんな言葉を聞くにつけ、
(遠くへ行くんだなあ。しんちゃん。
 福岡で会ってるとあんまり意識しないけど、
 愛知で仕事をしていて、向こうでの生活があるんだなあ)
 と、なんとなーく、しんみりする。

 でも、全部おぼえてるなーと、思った。 
 横顔、すっきり細い首筋とか、
 どうしてもなおらない猫背とか、
 大きな手の指の節ばった感じとか、
 そういうところまで、見なくても、ぜんぜん、思い出せる。
 恋人ならでは、か。
『指さえも』という大好きな歌があったなあ。

 寄り道をする気にもならず(意外とダウナー)、まっすぐ家に帰って、ふてって昼寝。
 そしてひたすらに本を読んだ。
 ゆうべから読み始めた、『赤毛のアン』
 アン・シャーリーの何とよくしゃべること、本を閉じるタイミングすら見失う。
 一気に読み進み、ラストあたりではしくしく泣き続けた。
 夜ご飯にはおいしい中華を食べに行ったけど、
 帰ってきたらまた もの寂しくなったので、
 もーまた寝ちゃおう、と布団をかぶってみたが(←この夏に?)
 眠れず。
 友だちや会社の人からメールが入ってきてやりとりなどをしていると、
 自分たちの言葉に酔っぱらって、これまた切なーくなってくる。
 私ってやつは、どうもときどき、夢みがちっていうか、おセンチになるみたいだな。くだらないんだけどしかたない。
 
 でもきのう、夕焼け空の下を車で走っているとき、気づいたんだもんな。
 あんなに燃えるような輝きは、季節の終わりのもの。


 夏はもうすぐ終わるのだ。





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