moonshine  エミ




2003年08月16日(土)  一度きりの季節を何度も何度も

 『TUGUMI』(吉本ばなな 中央公論社)を読み返す。
(↑中公文庫、でないところに密かに注目。
 めずらしくハードカバーで持っている本なのだ)

 もう二度とかえらない、少女達の輝かしい季節(オビの文句より)
 海辺の町のひと夏の物語。
 小学生だったころから何度読んだかわからない。
 物語のもつ普遍の郷愁と、毎年毎年これを読んでいた自分の姿、
 幾層にも重なった懐かしさに目もくらみそう。
 好きなところは、声に出して、読んだ。
 そんなことするのは久しぶりだったけど、子どもの頃は、よくやっていた。
 
『私は自分が海のない場所に越してゆくことが、
 どうしても信じられなかった。
 あんまりピンとこなくて、不安になるくらい不思議だった。
 いい時も、悪い時も、暑くて混んでいても、真冬の星空の時も、
 新年を迎えて神社へ向かう時も、
 横を見ると海はいつも同じようにそこにあり、
 私が小さかろうが、大きくなろうが、となりのおばあちゃんが死のうが、
 医者の家に赤ん坊が生まれようが、
 初デートだろうが、失恋しようが、
 とにかくいつもしんと広く町をふちどり、
 きちんと満ちたり引いたりしていた。
 うんと視界のよい日には湾の向こう岸がはっきり見えた。
 そして海は、見ているものがことさらに感情を移入しなくても、
 きちんと何かを教えてくれるように思えた。
 そんなふうなので今までは、その存在や、絶えず打ち寄せる波の響きを
 あらためて思うことはなかったのだけれど、
 都会では人はいったい何に向かって「平衡」をおもうのだろう。
 やはり、お月様だろうか。
 しかし月はあまりにも遠く小さくて、何だか心細く思えた。
「つぐみ、私、自分が今さら海のないところで暮らせるなんて信じられない」
 と私は思わず、口に出してしまった。』

 長い長い引用。(だめなんだよね、こういうのって・・・)
 目で追い、声を出して、読んできた。
 それが文学かどうか、立派な文章なのか、たいしたもんじゃないのかなんて、もう関係ない。
 心の海の底の砂地だ。

 しかしこのシーンは、これに答えるつぐみの言葉がまた、いいんだよね。

 その後、『ネバーランド』(恩田陸 集英社文庫)を読む。
 こちらは、少年たちの冬の物語だった。
 この人の小説、初めて読んだ。面白かった。
 設定だけを挙げていくと、いかにもな「作りもん」なのに、
 読んでるとあんまり違和感がない。・・・って上手さだよなあ。
 それに、さらりとした情感で、男の子たちがとてもキュート。
 これくらい怖くない小説が他にもあるなら、また読みたい。恩田さん。

 恩田さんといえば、昼間は『踊る大捜査線スペシャル』の再放送を見た。
 なんか・・・2時間半もテレビを見るのって、すんごい久しぶり・・・。
 新鮮で面白かった。
 青島とすみれさんのつかず離れずの関係っていいなあ。
 頼りになるんだかならないんだか分からない真下くんのキャラも好き。

 暗くなるまでの時間、走る。
 今日は見事な夕焼けは見られず、代わりにしとしとと雨が降り出した。
 途半ばにしてやめるのが何となくイヤで、6.5キロまで、濡れながら、走った。
 なんだか大変ストイックな感じでした。

 
 夜はしんちゃんとメッセンジャーしたりゲームで対戦したりしつつ、
 気づけば11時過ぎに寝てしまった。
 こんなの、いったいいつぶり?!





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