moonshine  エミ




2002年08月29日(木)  リップスライム『TOKYO CLASSIC』 思わず目を見開く聡明さ

 リップスライムの最新アルバム『TOKYO CLASSIC』。会社の先輩にもらったMDだ。お盆明けてからこっち、はや2週間も私のMDウォークマンに入っている。
 チャートの1位を取ったということ。「おめでとう!!」と叫んで、やんややんやと喝采をおくりたい。おひねりも投げたい。そう、私、このアルバムがいたく気に入ってるのだ。

 ヒップホップは元々あんまり好きなほうじゃない。ましてJラップっていうのかね、トラックといい詞のセンスといい、ダサくて。
 それを鮮やか〜に打ち破ってくれたのがこの人たち! このアルバム!
 
 まず、始まり方がカッコイイ! 音楽も文学も、最初はかなり肝心です。
 タイトでファンクで都会的。最初に聞いたとき、この部分でもう、「このアルバム、いいに違いない!」と確信しちゃうくらい。
 アルバム全部通して、とにかく音がいい。凝っているけど凝りすぎず、練れていて、しつこくないけど何度聴いても飽きない。

 それを象徴するのが「MANISH BOY」のカバーが入っていることで、コレはブルースの巨匠マディ・ウォーターズが'60年代に歌った有名曲。ジミヘンはじめ、様々なアーティストがカバーしてるわけだが、このリップスライムバージョンほどあっさりしたのはあんまりないんじゃなかろうか(笑)
 湿り気、粘り気を帯びて、絡みつくようにやろうと思えばいくらでもやれる曲、実際そういうふうにカバーされがちだと思うんだけど、なんともまあ至極明快なサウンドとボーカル処理。でも原曲には忠実です。 
 この、マニアックさを覗かせつつもあくまでキャッチー、凝ってても独りよがりにならない聡明さ、自分たちが楽しみつつも、いい意味でリスナーを意識してる感じ、これこそがヒットの秘密なんじゃないでしょうか。
 ただ流れてくる音に身を任せても楽しい! それでいて、ツウっぽく咀嚼する人たちにも満足感を与えることでしょう。

 ヒップホップではたいてい、マイクを握るのは二人、多くて3人やない?
 しかしリップは4MC! これはどう考えても多いはず。なのに全然くどく感じない。4人の違いも明確で、よくできてるよ。
 詞もJラップにありがちなダサさがない。言葉の選び方も韻の踏み方もおしゃれで気持ちいい。私が好きなの、「あみだ〜クジ、おとなり、アタ〜リ」っていうとこ。耳がここを待つ! かといって、上っ面に流れていくだけじゃなくて、一曲を通してちゃんと、伝わってくるものがある。
「それぞれ一つのLIFE それぞれが選んだスタイル」
 ってフレーズばっかりしか聴いたことが無かったヒットシングル「One」も、最初から聞くと普遍的な切ない前向きさにジンとくる。
 音作りの中心になってるDJの人は、もちろん、相当いろんな音楽知ってるんだろうな。遊びのフレーズも多彩です。

 リップスライムって、よく「遊び心」の部分がクローズアップされてるけど、私はこの人たちのベースは真面目さだと思うなあ。
 奔放にやってるみたいだけど、もちろんいい意味で、かなり真面目に音楽に取り組んでいる印象。あたま良さそう。少なくとも、ドラッグとかとは無縁の人たちでしょう。一生懸命さも空回りせず、最高と思われる方向をちゃんと向いてる。
 でも、そんな賢そうな臭いの消し方が抜群にうまいんだよねえ。聡明さや真面目さが鼻につかない。イマドキな感じで洗練されてるけど、親しみやすい。明るく楽しく若々しく、時々切なく、爽やかにエッチ。すごい! こりゃ売れるわけだ。こんな人たちが出てくるとはねえ。瞠目したよ。
 「One」「FUNKASTIC」「楽園ベイベー」3つのシングル曲の驚くべき出来のよさ、それぞれの色のくっきりした違い、そしてこのアルバムの完成度からして、もう息長く上質な音楽を提供してくれるのはほぼ間違いない。楽しみ楽しみ。

 ほんと、毎朝これを聴きながら通勤するのが楽しくて、いちいち感心しっぱなしで、少しでも長く聞くために、駅から会社までの道を朝っぱらから遠回りしていた私でした。もーびっくり。
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