そろそろ区切りの年になる。 「という訳で、結婚10周年記念行事しようよ!」 と提案したが、主人の反応はいまいちであった。 「何、その『記念行事』って……」 「記念行事は記念行事よ。北朝鮮だってやってるじゃん、金正日の誕生日なんかにさ。だからうちでもやらない?」 私が胸を張ってそう言ったのに、主人の反応は変わらなかった。 「何故北朝鮮の真似事を……まあいいけれど。で、何をするのさ」 「例えば10年目の新婚旅行とか、スイート10ダイヤモンドでもいいよ☆」 と私が誘導するも、あーハイハイ考えとこうね、という態度であった。
そんな話をした数日後、晩御飯のメニューで揉めた。 鶏鍋にしよう、というところまでは良かったが、何味にするかでまず揉めた。 水炊きにしてゆずポン!という主人に対し、比内地鶏のたれを使った醤油味がいいと主張する私。 で、いつものように主人が折れてくれた訳だが、 「その代わり、茸いっぱい入れてね」 と言うので、 「勿論。しめじと榎茸でいいよね」 と返事をすると、 「嫌だ。しめじと舞茸と椎茸がいい」 と主人が主張した。 おや、珍しいと思ったら、なんと 「えのきキライ」 と言うではないか。 「そうなの!? 全然知らなかったよー、噯気にも出さないんだもん。えのき美味しいのに。私は好きなんだけれど」 と私が驚くと、主人はぼそりと呟いた。 「前にも言ったよ……味も匂いも嫌いだって。なのにシオンがスルーするから。今みたいに『でも私は好き』って、冷蔵庫の中に残っているから悪くなる前に使わなきゃって、いつも俺が料理して、嫌いなのに味噌汁に入れて消費させられて……」 何、今更その恨み節。 「悪かったわよ。特に好き嫌い無いって聞いていたからさ。じゃあもう二度と食卓に出さない。それでいいんでしょ」 「いや、食べられない訳じゃないし、嫌いだけれどどうしても駄目ってほどじゃないから」 「ほら、そう言うから私も覚えていなかったのよ。嫌いというより苦手なんでしょ」 「ううん、食べられるけれど嫌い」 あーもうめんどくせーな!
えのき美味しいのにな……油揚げとえのきと若布の味噌汁なんて、最高なのに。 と私がぶつぶつ言っていると、 「まあ食べられない訳じゃないから……」 どっちなのさー!
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