みかんのつぶつぶ
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夕暮れどき。 買い物帰りに何気なく目に入る民家の庭先。 思い出すのは父の後姿。 こんな時間は、 ホースを持ち、草花に水遣りをしていたその姿。 昼間の陽射しでカラカラに乾いた盆栽の土が、 水を含んで放つその匂い。
蚊取り線香の香り。
ああ、夏が来るね。
また、夏が来るんだね。
キミがいた夏。
私が生まれた夏。
もう、 ふたりともいない夏。
私もいつかはいなくなる夏。
おばあちゃんが着ていた小さい水玉のプリーツスカート。
カルピスの青い水玉。
キンカンの大きな瓶。
横須賀の坂道。
鎌倉の花火。
がんセンターの向日葵。
国立病院の蝉の声。
すべてが夏。
どうしても癒えない感覚。
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