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| 2002年02月01日(金) |
キス!キス!!キス!!!〜True Love〜 |
やっと舞台ライフが幕を開けました。2002年初芝居は、内野聖陽vs秋山菜津子による、tpt(シアタープロジェクト東京)「ブルールーム」。これは、幕開けにふさわしい面白いお芝居でした。
1900年、アルトゥール・シュニッツラーが書いたプライベートな「輪舞」という作品は、1950年、マックス・オフェルスにより「La Ronde」という映画になり成功した。(この作品には「夜ごとの美女」で大好きなジェラール・フィリップが出ているというので、さがして観てみたい!)そしてロンドンでデヴィッド・ヘアーの脚色で「The Blue Room」として舞台化を経て1998年、ブロード・ウェイでニコール・キッドマンとイーエン・グレンによって111回公演がうたれた。そういう経歴があるので、ご存知の方も多いかもしれない。
5人の人物が10の場に登場する。少女とタクシードライバー。タクシードライバーとホームステイしている留学生。留学生とその家の息子で学生。学生と人妻。人妻とその夫である政治家。政治家とモデル。モデルと劇作家。劇作家と女優。女優と高貴な男。高貴な男と少女。そう、それぞれのスケッチが断片的に描かれ、ラストは、最初の少女に戻る。まるで輪のように。それを演じる役者は2人。
断片的なスケッチとは、男と女の性的な関係の断片を取り上げている。男と女が出会い、時に川辺やキッチンテーブル、楽屋のソファ、主にベッドでセックスに至るまでを描き、悦楽の到達までは暗転。一瞬にして最短0分から最長2時間以上までの時間を電光掲示板で知らせたあと、その暗転はすぐ明転し、セックスのあとの情景になる。(電光掲示板が安っぽかったので、違う手法にして欲しかった)
セックスシーンそのものは、ほぼない。いたすまでの会話やキスから、一瞬の暗転を経て、だいたい男のあらい息ではじまる。それまでの会話、そのあとの様子、そして時間。それで説明がつくかのように。おそらく、ポルノグラフィに重きをおき、「前衛」「挑発」「猥褻」を狙うものではなく、「どうして男と女は欲望を手に入れるか」「恋しさは欲望が満たされればなくなるのか、増すのか」「男と女の関係の不思議」などという、永遠に解答のない距離についての、スケッチの連鎖のように思える。
演出のデヴィッド・ルヴォーは「センセーションを狙うつもりはないが、いかにして恋しい相手と関係を築くか、これを探求する事で生命力を持つ芝居になりうる。非情に演劇的であり、官能的な芝居にしたい。」と述べている。
セクシャルなスケッチの連続。特にそこに物語はない。ただ、背景を読み取る事は可能。そして、どの男女もが、ほぼ同時に別の男女と関係を持っていることでこのスケッチの連鎖はできあがっている。
「女はキスをねだる。」最初に思い浮かんだ言葉。男がねだったのは10シーンのなかで2度ほどだったか?キスをせがむ女。男は生理的欲望と征服欲?そして、もしかして愛。好きな女がいながら別の女と関係が持てるのはなぜか?女が本当に望む相手に出会ったとき、そこでさすらいは終り、彼女の魅力は失せるのか?なぜ、セックスの中に必ずしも愛はないのか?わかっていても関係するのか。本当にセックスシーンのスケッチ集。そこに生々しく生きている人間の、実は生活臭があるのかもしれない。なんてことを考える。
だいたい、「真実の愛」ってなんだろう。
女はキスをねだる。
5人の人物をそれぞれ演じ分ける俳優は、それ以上の回数着衣を変える。髪形も。丸い回り舞台を上手く利用し、生着替えも見せながら、それが本来裏で行われるチェンジなのか、役柄としてその場で見せていいチェンジなのか、曖昧なまま10場の切り替えは長々とした暗転もなく、小道具の転換も露呈しながら意外にスムース。本当に流れるように連鎖している。出て行く男。残る女。帰る女、訪ねる男。InとOutの利用。煩雑なようで、必ず、新しい場までには2人ともがOutしている。そして次の場へ別々、もしくは同時にIn。段取りが大変そうだ。だいたい、あの日、内野は、何度ジッパーを上げ下げしたんだ?
わたくし事だが、私は香水が好きだ。服を着替えるように香水を気分で変えていたこともある。しかし、現実には、夏は良くても冬はね、無理。(衣装に香りが移るから)それで最近は、春・夏と秋・冬で香水を使い分ける。今使っているのは冬、偶然にも「True Love」という名前。甘い、甘い系の香り。温度が上がる気がして、気に入って使ってる。ついうっかり、真実の愛、なんてものにぶち当たるかもしれないという期待を密かに胸に秘めて。(ウソです)
人物の設定上、俳優は衣装を変えると言ったが、まるでその人物の匂いまで変えてしまうように演じていた。同じ人間が流れるようにその場で10シーンを演じ分けていた。違和感はなかった。内野もとんでもなくセクシャルな男になったもんだ。そして演じ分けられる5人も相手が変わることにより、香水を使い分けるように接し方や態度が変わる。香水がトップノートからアフターノートへと変わるように時間の経過で同じ人物への気持も変化する。
そして愛って?
特定の男女にめぐりあい、そして育てるのが愛。お互いに愛情を傾け、信頼し、答え、育む。瞬発力と、持続力、そのかねあわせが難しい。神に永遠の愛を誓わなくても、もちろん誓ってもいいが、この愛が永遠でありますようにと願うのが愛。愛の定義は、私のような若輩が語るにはまだまだで、こんなものではないはずだ。でも、ねぇ、ちょっと待って。本当に、愛ってそんなものだけ?
例えば、この「ブルールーム」に登場する男女は、真実の愛から遠い人なんだろうか?夫がいながら、家族ぐるみの付き合いの学生とセックスする妻。妻がいながら、モデルに部屋を与える政治家。そして、実は娼婦をはじめたばかりの少女がはじめて出会ったタクシードライバーとは、客としてではなかったが、1年続いていることが、ラストシーンの高貴な男との会話でわかる。1度ではなく、継続して関係を保っている男女。劇作家と女優、女優と高貴な男の関係は、1度かもしれない。しかし、続いているほうに愛があり、1度のほうにないと言い切れる?ラブアフェアの一つのはずだった高貴な男とのセックスの後、女優はあきらかに心情的変化を遂げたようだった。そして、上記の夫婦。この夫婦に愛がないと誰が言い切れる?だからといって外の関係にも愛がないと誰が言い切れる?
そしてふりだし、「真実の愛」っていったいなんだろう。
女がキスをねだる 男がキスをかえす 体を絡めあう2人 男の体温を感じる・・・・寂しさを埋めるため? 女のつけている香水が男にかすかに移る 男は女の体温をどう感じているのだろう だんだん男の体温が恋しくてたまらなくなる 2人の体温はあがり、女の香水の匂いが変わり始める 女の気持も変化しはじめる
今までも何度も体を重ねた男がいる だけど体を絡めても男は遠くにいたようだった 2人でイルコトの孤独は、1人でネルコトよりも孤独に感じた夜 女の恋しさは、その男から消えていく あんなに恋しくて恋しくて仕方がなかったのに あれこそが真実の愛だと・・・・信じたかっただけ? 行為が終り、男は暫らく横にいた そしておしゃべりの途中で男はシャツを手に取った 男がどう考えているか、わからない、確かめようもない 女はキスをねだる 男はキスに答える はじまるかもしれない、はじまらないかもしれない 2人はやさしく抱擁する
セックスより、キスが愛に近いかも?もっと愛に近いのは、心からの抱擁かもしれないけれど。
客出しが、プレスリーでした。確か、「愛さずにいられない」これ、好きなの。あぁ、そうか、これが秘密のテーマ?
「真実の愛」その正体はわからない。でも、女も男も誰かを「愛さずにいられない」「ブルールーム」で愛を確かめよう。 転調: ところで、キスをせがむのは、セックスよりキスが好きというのは、女に多いの?カップル未満の男女でこの芝居行ったら、ドキドキするんじゃないかと思った。どっちかに、もしくは両方に下心があればね。 でも、付き合ってる男女でなくても、一瞬愛しさを感じたら、キスしたくならない?なっちゃだめ?
付録:役者のラブシーン 下手なキスはこっちが照れる。抱き寄せて、抱きしめて、それすらぎこちない役者の結構いることよ。なんだか、彼女にもそうなん?って、こっちが照れる。 上手なキスは、素敵。抱き寄せて、抱きしめて、キス、そして押し倒しても、全然照れがない。流れるように移動していく、その様は美しいくらい。彼女にもそうなん?照れないかわりに、とってもジェラる。 役がかわると、歩き方や、うなずき方、食事のシーンがあればその食べ方、役作りで変えてくると思うけれど、キスシーンはかなり、変えようがない。「やさしく」とか「軽く」とか「激しく!」とか「むさぼるように」とか、台本で指示があっても、下手なキスしかできない役者は、現実でもそうなのか、遠慮してるのか、軽いキスはなんとかこなせても、「むさぼるような」キスはだいたいNo Good。しかも、そのあとに進む過程で、彼女のスカートをまくしあげながら足を手が這う、だとか、キスで這い上がる(これなんてもってのほか)だとか、キスが首筋から胸元へ降りていく、だとか、脱がせながらキスしつづけるとか、なんだか、ダメだ。私生活を出さないようにしているのか?そんなキスないだろう。そんな手の動きにセクシーさは感じないぞ。結構、多い。なんでだろ。こっちが恥ずかしくなるし、なんかがっくり。ジェラるどころじゃない。 だけど、内野くんはやってくれました。百戦錬磨ですか?5役10場、キスの嵐。でも、どれも不自然じゃなかった。強引であっても。そして、私は、ジェラるためにチケット代払ったのか?!と、思ったりする。いったいどっちのほうがいいんだよ。いや、上手いに越したことはない。(キスもだけど、芝居ね、芝居)
ところで、長っ!
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