よるの読書日記
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| 2003年08月09日(土) |
誰も吉良を心配してない |
『四十七人の刺客』<池宮彰一郎/新潮社> 健さんの主演で映画化された作品です。色部を演じた中井貴一の 酷薄な印象がそのまま。彼にとっては吉良さんは主君の実父って だけで、敬愛や恩義の対象ではありません。大事なのは 上杉家で、その係累である吉良家に問題が生じるのは よろしくない、そういうスタンスで動いてらっしゃいます。
一方の健さん(大石)も忠義一辺倒の武士じゃありません。 お侍さんにしては資産(塩)運用がとっても上手な彼は、 プールしておいた潤沢な資金を元手に上杉家、そして時の権力者 柳沢吉保相手に情報戦を仕掛けるのであります。
吉良が主君の仇として憎いと言うよりは(それもあるけど)、 一連の事件をめぐる幕府の対応(色部さんが糸引いて柳沢さんに させたんだけど)を恨んでの討ち入りなわけで、 吉良は言わば駒なわけですね。考えてみたらそういう意味では 高齢なこともあり、ちょっと気の毒です。
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