よるの読書日記
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| 2003年03月26日(水) |
spirited away |
『神隠し譚』<小松和彦 編/桜桃出版> 天狗の仕業から、民俗学からの考察に『お勢登場』<江戸川乱歩>まで、 さまざまな角度から神隠しを照らした一冊。 昔は神隠し、という位置付けが悲劇の緩衝材になっていた という考察が興味深かったです。実際には人身売買だとか、 自殺だとか悲惨な事件や事実もあっただろうけれど、 衝撃的な事実を目の当たりにするよりは、それを神が隠したのだ、 天狗がさらったのだと思うことで残された者達を納得させる。 そうして諦めること、諦めさせることはそれはそれで責められない。
近年においての新潟の監禁事件や北朝鮮による拉致被害も 現代の神隠しである、という指摘はごもっとも。 諦めずに私が生まれる前から闘い続けた拉致被害者の家族の方達の ご苦労は筆舌に尽くしがたいものだったろうと思う。 そしてきっと日本全国に、20年以上前に行方不明になった子や弟や、 友人がもしかして……と疑い悩んでいる人たちがもっとたくさんいる。 この問題はまだ解決の入り口に立ったばかりなのだ。
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