よるの読書日記
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| 2003年02月20日(木) |
日が当たれば影も濃い |
岡山と言うと何を連想しますか。 私がまず思い浮かぶのは桃太郎、果樹、 温暖でいい所のイメージ。 でもこれは岡山でも南の方の話らしいですね。 岡山のもう一つの顔は、暗くて怖い。 本陣殺人事件も獄門島も八つ墓村も鬼首村も、全部岡山。 ――ま、これは横溝さんが岡山に疎開してたからか……。 でも八つ墓村の発端となる事件のモデルが、 津山で起こっていたことは有名です。
さて『岡山女』<岩井志麻子/角川書店>は 無理心中から生き延びたものの片目を失明し、 それから目に見えない筈のものを見ることを生業にする女が 主人公の連作短編です。舞台は写真が、珈琲が、 鉄道が、西洋文化が押し寄せて来る一方で、 妾が、女郎が公然と認められていた時代。 この人の作品はいつも湿った感じがする。 登場人物がめそめそしていると言うのではない。 むしろ諦観の中それでも日々生きているのだけれど、 隠し持つ過去や、謎や、怒りや、情念がじっとりと重いのです。 だから幽霊よりも生きている人間の方が、貪欲で恐ろしい。
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