よるの読書日記
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| 2002年05月16日(木) |
お利口さんコンプレックス |
『八月の博物館』<瀬名秀明/角川書店> 文系理系と言いますが、結局真に頭の良い人って 両方凡人にはかなわない域にあるのよねん、 とグレモードな気分に打ちのめされる超文系人間が ここに一人。 瀬名氏が研究者としての地位を確立しないうちに 作家として名声を得てしまったため、 どっちの分野でもやりづらくて苦しんでいるようだ、 とはご本人に直接会った森博嗣氏のエッセイにもありましたが。 ふん、ちょっと贅沢な悩みかもね。(拗ねてます)
物語にも評論家に「文系をなめるな」と評された 作家がやや落ち込み、悩み、そして新たな創作を 模索する場面が出てきます。その評論家は オマエ文学論とか全然読んでないだろう、 もっと勉強しろよバーカみたいなことを言うのですが。 今その手のをちゃんと読んでるのってほんまに 大学で専攻するような人だけでしょう、 少なくとも若い世代においては。 文学論を読んで理解したからって感性や想像力が 磨かれるもんでもないと思うしなぁ。 なんか理系人の文系コンプレックスを逆手に取った 負け犬の遠吠えみたいで不愉快でした。 そして何が嫌かってこういうことを本当に言う 化石親父が現実にいそうなことだよね……。
小説の方は、少年(主人公A)の冒険談として わくわくして読むも良し、作家(主人公B)の 執筆活動をリアルタイムで覗く気分で読むも良し。 私は『パラサイト・イブ』<角川文庫>より 面白く読めましたよ。 それはやっぱり「えっ嘘やだ信じられない そんなこと有り得るの?でもよる馬鹿だからわからなーいっ。 でもこんなこと本当に起きたら怖いよ〜〜」という より「ああもう嘘嘘全部お話オールフィクション」 という余裕から来ているのかもしれません(笑)。 それでも最後に「瀬名さんあんたもしかして……。」 と思わせるところがミソ。
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