よるの読書日記
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『噂の皇子』<永井路子/文芸春秋> 永井路子的解釈に基づけば、 平安時代というのはあれでなかなか際どい時代だったようです。 どうものほほんと和歌ばっかり読んでいたわけでもないと。 例えば当時の人々がやたら怨霊を怖れたりするのも 一種のポーズであったりするわけです。 「前大臣の、崇りではあるまいか。」 そうひそひそ囁きあうのは怨霊となった人を 蹴落として栄光を手に入れた人が妬ましい公達。 また自分の罪業を悔いるふりして成功者は 誰が次を狙っているか、誰が今のところ使えるかを 鋭く探っていたりして――。
今流行の安倍晴明とか、永井氏が書いたらどんなかな。 結構クールでニヒリスト、でもパフォーマンスが 派手で権力者の心理を上手に読み取るしたたか者が そこにはいそうな気がする。 でももう原材料が手垢まみれだし、 もはや新たな晴明像構築って難しいかしら。 蛙殺すエピソードなんか読み飽きたわって位 あちこちで使われてるもんなー。難しいか……。
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